住宅ローン 変動1%目前のいま フラット35で金利と安心を両立

最近、SNSや相談の現場で、住宅ローンにまつわるこんな声をよく目にします。

「何も考えずに変動金利で借りてしまった」
「これ以上金利が上がると返済が不安になってきた」
「今のうちに固定金利に変えた方がいいのだろうか?」

先週の金融政策決定会合で政策金利の引上げが決まり(こちらの記事を参照)、日銀の金融政策は明確に「低金利が当たり前」の時代から「金利のある世界」へと大きく動き出しました。住宅ローンの変動金利も2026年2~3月にもう一段上昇し、1%前後に達する可能性が指摘されています。こうした中で、金利変動のない全期間固定金利タイプの住宅ローンに安心を求める動きが強まるのは、ごく自然な流れと言えるでしょう。

そして今、その受け皿となるフラット35は、制度面・金利面の両方で、大きな節目を迎えています。昨日のコラム「金利上昇時代にフラット35はどう変わる? 限度額アップ・借換え優遇・40年返済へ」でも解説した通り、国の補正予算により、フラット35は制度そのものが大きく見直されました。

本記事では、その制度改正を前提に、
「いまのフラット35は、なぜ“使わない手はない状況”なのか」
そして、
「ただし、誰にでも勧められるわけではない理由」
を、ファイナンシャル・プランナーの視点で整理します。

 


なぜ今、フラット35が注目なのか


フラット35は、本来「いちばん金利が低い住宅ローン」ではありません。金利が上がっても下がっても返済額が変わらない、将来の金利変動リスクを無くすための住宅ローンです。

ところが現在、そのフラット35が、

① 変動金利は上昇局面
② 民間の固定金利はすでに2%台後半
③ 一部の金融機関では長期固定金利から撤退

という環境の中で、相対的に非常に低い金利水準にあります。

いまどれくらい民間の固定金利より低いかというと、2024年8月はフラット35が1.85%(返済期間20年超)だったのに対してみずほ銀行が1.86%、りそな銀行1.665%と、民間の方がフラット35より低水準でした。それが2025年12月現在はフラット35が1.97%なのに対してみずほ銀行が2.91%、りそな銀行にいたっては3.21%と大きくフラット35を上回っています。

この金利からさらに、建物性能(フラット35S)や子どもの人数(子育てプラス)などで5年から10年間、金利が最大1.0%優遇されます。つまり返済当初は金利が0.97%と、もはや変動金利並みの水準になる訳です。

さらにちょうどいま、
・融資限度額の引き上げ
・返済期間40年への延長
・借換えでも使える「子育てプラス」
・床面積要件の緩和

といった、国による制度的な後押しも重なりました。「安心を買うためのローン」であるフラット35が、「金利面でも有利」という特別な状態になっています。でも、長期金利(10年国債の利回り)の上昇など、いまの日銀の金融政策や経済環境を見ると、この状態はそれほど長く続くものではないと言えます。

 


ただし誤解してはいけない点


ここで強調しておきたいのは、フラット35は“今がいちばん安いから急げ”というローンではないという点です。

・金利が低いから選ぶ。
・周りが固定に動いているから選ぶ。
・不安だからとりあえず切り替える。

こうした判断は、結果的に家計を苦しくすることもあります。

実際、最近は「変動金利が不安だから、今すぐ固定に変えたい」という相談が増えていますが、

  • 現在のローン条件
  • 残りの返済期間
  • 今後の家計の余力

を見ずに借換えをすると、安心を得たつもりで、負担だけが増えるケースが起こり得ます。

 


いま動くべき人、慎重でよい人


では、どんな人が「早めに動く価値がある」のでしょうか。たとえば、

  • 変動金利で借りており、金利上昇時の余力が小さい
  • 今後、教育費など大きな支出が控えている
  • 返済額がこれ以上増えると家計が不安定になる

こうした方にとって、返済額が一切変わらない安心には、明確な価値があります。

一方で、

  • 金利が上がっても十分耐えられる
  • 早期返済や繰上返済の計画が明確
  • 家計全体に余裕がある

という場合は、慌てて固定金利に切り替える必要はありません。変動金利が上がっていると言ってもまだ1%。いまの固定金利の水準に比べればまだ低い状況。可能な範囲で変動金利のまま返済を続け、状況を見ながら繰り上げ返済を行うという選択肢もあります。ここで重要なのは、「金利の予想」ではなく「家計の耐久力」です。

 


まとめ:いまは“ボーナス付きの安心”を検討できる特別な時期


現在のフラット35は、

  • 金利上昇が見込まれる環境の中で
  • 全期間固定という安心を持ちながら
  • 金利水準では民間の固定金利より明らかに低く
  • さらに「子育てプラス」など、国の後押しもある

という、かなり有利な条件のそろった状態にあります。

これは、「フラット35がずっと有利になる」という意味ではありません。むしろ、今だけ“安心にボーナスが付いている”時期と捉えるのが現実的でしょう。そのボーナスを享受するためには、金利が上がり切る前、できるだけ早く動くのが得策です。

ただし、だからといって慌てて動くのはちょっと待って下さい。そのボーナスを活かせるかどうかは、制度ではなく、家計側の判断にかかっているからです。いま問われているのは、「金利が高いか低いか」ではなく、その金利環境の中で、家計をどう構想するか。フラット35を使うかどうかではなく、フラット35を家計の中でどう位置づけるか。

たとえば、住宅ローンは

・他のローンに比べて金利が低い
・40年などの長期返済が可能
・団体信用生命保険も付く
・返済当初は住宅ローン減税も受けられる

といった、他のローンにはない有利な特徴がたくさんあります。でもこの有利な特徴も、金利が上がったからと言って繰上返済をしてしまうと、返した金額分のメリットが無くなってしまいます。住宅ローンのメリットを最大限生かすために、できるだけ長期にわたって返済するのであれば、長く返し続けることが出来る家計であるかのチェックが必要です。

そのための材料として、ライフプラン(キャッシュフロー表)による家計の点検は、これまで以上に重要になっています。安心を求めて慌てるのではなく、構想を持って、冷静に選ぶ。それが、金利上昇時代の住宅ローン選びで、後悔しないための基本だと考えています。

いま住宅ローンの金利上昇を受け、今後の家計や返済に不安を感じている方も多いのではないでしょうか。家計とマイホーム相談室では、ライフプランの作成や現在の住宅ローンの診断、今後の返済の考え方についてのご相談を承っています。まずはお気軽にお問合せ下さい。

 

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