税金・制度 住宅ローン減税改正で逆に減税額が増えるケースとは

住宅ローン減税の改正については当コラムでも何度か取り上げていますが、国の基本的な方針としてはローン金利の低下により住宅ローン減税の本来の趣旨である「住宅ローンの利息負担の軽減」を逸脱して逆ザヤが発生するようになったため、控除率を1.0%のところ0.7%にしたり上限を引き下げる等して減税を縮小するというものです。そのため「増税」だとか「改悪」などと言われてもいますが、その代わり控除期間を10年から13年に延ばしたり、建物の省エネ性能によって上限を変えるといった配慮もしていて、人(建てる建物)によっては影響が少なかったり、むしろ減税額が増えるケースもあります。

 

この住宅ローン減税の改正でどれくらい減税額に影響が出るのかについて、先日取材頂いた中日新聞・東京新聞(2月10日朝刊)の記事にも試算が出ていますが(中日新聞の記事についてはコチラから)、実は取材にあたっては記事に出ている以上の試算をしてみました。その結果、改正の影響を受けやすいケースや逆に減税額が増えるケースの傾向が掴めましたので、記事の補足も兼ねてご紹介してみたいと思います。(試算は、会社員の夫とパートの妻(年収96万円)、子ども二人の四人家族で、金利0.525%、35年返済のローンを組んで新築住宅を購入したした場合)

 

【改正の影響が低い(逆に減税が増える)ケース1】

これは記事にもありますが、典型的なのは所得の低い人。所得が低いということは所得税・住民税の納税額も低くて改正前は上限額いっぱいまで使いきれていなければ控除率縮小の影響も少なく、逆に控除期間が3年延びたことで、減税額が増えることもあり得ます。草野の試算では、年収500万円の会社員が3500万円の借入れをした場合、減税額が改正後の方が高くなりました。

 

【改正の影響が低い(逆に減税が増える)ケース2】

次に挙げられるのが、性能の高い住宅を購入した場合。特に、改正前は「一般住宅」とされていたZEH水準の省エネ住宅は、控除対象の上限額が旧制度の4000万円から4500万円に上がっているので、年収1000万円の会社員が7000万円の借入れをした場合、減税額が改正後の方が増えるという試算結果になりました。

 

【改正の影響が低い(逆に減税が増える)ケース3】

もう一つ挙げられるのが、不動産会社が購入してリフォームして転売する「買取再販」の中古住宅で長期優良や低炭素住宅、ZEH水準の省エネ住宅の場合。これも改正前は控除対象の上限が4000万円でしたが、改正後は長期優良や帝丹層住宅が5000万円、ZEH水準省エネ住宅で4500万円に上がるので、住宅ローンの借入額が上がると改正の恩恵を受けやすくなります。

 

なお、最後に挙げた買取再販のケースは試算をしていません。実は中古住宅の場合はかなりややこしく、買取再販だけでなく、個人間売買の場合、またレアケースとしては未入居の住宅を再販した時で変わります。これらレアケースを含めて全て網羅して新聞記事にしても分かりにくいだけなので、一般的なケースに絞って取り上げられた次第です。

 

ちなみに、これら中古住宅のパターンも網羅した住宅ローン減税の改正前と改正後の上限額などの比較表も取材に当たってまとめました。かなりマニアックなのですが、ネットで調べた限りここまで細分化した資料は見かけないので、下記にご紹介しておきます。

 

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