住宅ローン家計 日米そろって株価最高値でも、金融政策は正反対? 金利動向を読み解く

昨日の記事では、日経平均株価が過去最高を更新したことを取り上げました。結論としては「株価の最高値がニュースを賑わせていても、住宅ローン金利に直結するものではないので冷静に」とお伝えしています。

ただ、昨日触れなかった点があります。アメリカのダウ平均株価も過去最高を更新し、ついに 46,000ドルの大台を突破したことです。アメリカでは「雇用統計がやや弱め → インフレ圧力が和らぐ → FRBの利下げ期待が高まる → 株高」という連想が働いています。エッ、利下げ!? 日米ともに株価最高値を更新したのに、日本は利上げが取り沙汰されて、アメリカでは利下げの話が出ている・・・ なんで正反対の動きになるの、と思いませんか?

そこで今回は、ファイナンシャル・プランナーの立場から、この日米株高と金融政策の違いを整理し、住宅ローン金利への影響について解説していきます。

 


アメリカと日本の金融政策の違い


アメリカでは、FRBがインフレ抑制のために政策金利を5%台まで大幅に引き上げてきました。歴史的にみると、アメリカの政策金利(FF金利)は通常 2~3%程度が中立的な水準とされ、FRB自身もそのあたりを景気を過熱も減速もさせない「正常な金利(中立金利)」と想定しています。そのため景気が減速したりインフレが落ち着けば、利下げというカードを切れる余地が大きく残されています。投資家にとっても「利下げ=資金調達コスト低下=株価にプラス」という連想が働きやすく、株高につながりやすい環境になっているのです。

一方の日本は、長年にわたりゼロ金利やマイナス金利政策を続けてきたため、昨年3月から利上げをしてきたといっても、まだ利下げの余地はほとんどない状況です。むしろ「物価の安定のために、どこまで利上げできるか」が焦点となっています。日銀の植田総裁も「金融正常化=金利を上げも下げもできる環境」を目指していると繰り返しており、当面のテーマは利上げによる正常化にあるといえるでしょう。

 


為替と円安是正の視点


そして、上記の通り日米の金利差が大きいことが、円を売ってドルで運用するという円売りドル買いによる円安を招き、その結果として日本国内の輸入品やエネルギー価格を押し上げています。こうした状況で行き過ぎた円安を放置することはできないため、円安是正の観点から利上げが選択肢に入るのも日本独自の事情といえるでしょう。ただし、日銀は為替の水準だけを狙って利上げを行うことはせず、あくまで物価と賃金の持続的な動きを見極めながら判断するというスタンスを崩していません。

 


日銀が目指す「正常な政策金利水準」とは?


日銀が繰り返し語る「金融正常化」とは、特定の金利水準を指すものではありません。むしろ、経済の状況に応じて利上げも利下げもできる、いわば “金利のある世界”を取り戻すこと が目的です。そのうえで専門家や市場関係者の見方を整理すると、正常な政策金利の目安は 0~1%台前半とされるケースが多いのが現状です。日本は潜在成長率が低いため、アメリカのように2~3%の金利水準を前提にすることは現実的ではなく、1%前後でも十分「正常」とみなされます。

一方で、賃金と物価の好循環がしっかり定着すれば、将来的に2%程度まで政策金利が上がる可能性も否定はできません。もっとも、これはあくまで一部の見解であり、現時点でそこまでの見通しがあるわけではありません。つまり、日銀が目指す「正常化」とは必ずしも高金利を意味するものではなく、日本経済の実力に応じた水準で政策金利を柔軟に動かせる体制づくりだといえるでしょう。

 


政策金利と住宅ローン金利はどこまで上がるのか?


ここで少し踏み込んで、政策金利はどこまで上がるのか、草野の見解をお伝えします。もし景気回復と金融正常化が理想的に進んだ場合、政策金利が2.0%程度まで引き上げられるシナリオも「ゼロではない」と考えています。実際、2008年ごろには変動金利タイプの住宅ローン金利が2%近くまで上昇した時期もありました。仮に政策金利が2%になれば、住宅ローンの変動金利タイプは 2.2~2.3%程度に達する可能性があります。

もちろんこれはあくまで草野個人の見解であり、必ずそうなるというものではありませんが、かつてそうした水準が現実にあった以上、「起こり得るシナリオのひとつ」として意識しておくのは無駄ではないと思います。

なお、短期的には日銀は2026年の年明けにでも政策金利を現在0.5%のところ0.75%へ引き上げるのではないかとみられ、そうすると変動金利タイプは2026年春に1.0%超す可能性があります。

 


これから住宅ローンを組む方・返済中の方へ


まず、短期的な株高ニュースに振り回される必要はありません。住宅ローンの金利を決めるのは株価ではなく、政策金利や長期国債利回りだからです。

ただし、中長期的には金利上昇のリスクを想定した資金計画が欠かせません。変動金利タイプを選ぶ場合には、将来の金利が2%を超える可能性もあることを頭に入れておくことが大切です。一方で、安心を優先したい方は固定金利の利用も有効です。「全期間固定金利タイプ」や「固定金利期間選択タイプ」を選べば、上昇リスクを抑えられるからです。

また、すでに返済中の方も、繰上返済や借換えを柔軟に検討し、金利上昇に備えて家計に余力を残しておくことが安心につながります。

 


まとめ


日米ともに株価は最高値を更新していますが、アメリカは高金利から利下げに向かう余地があるのに対し、日本は低金利から利上げによる正常化を模索している点で大きな違いがあります。さらに日本では、円安是正や物価の安定を背景に、今後も利上げが選択肢として意識される可能性があります。

こうした状況を踏まえると、住宅ローン利用者にとって大切なのは、ニュースに一喜一憂するのではなく、長期的な視点で金利上昇リスクを意識した資金計画を心がけることです。変動金利タイプを選ぶ場合は将来の上昇リスクを頭に入れ、固定金利タイプを検討することで安心を確保するのも有効でしょう。また現在住宅ローンを返済中の方も、繰上返済や借換えを柔軟に考え、家計に余力を残すことが安心につながります。

なお直近では、来週に日米両国で金融政策の重要会合が開催予定です。日本では日銀の金融政策決定会合が9月18~19日に、アメリカではFOMCが9月16~17日に開かれます。これらの会合を通じて、次の政策金利の利上げの時期や日米両国の金融政策の方向性が見えてくるかもしれません。来週はまさに、日米の動きに注目が集まるタイミングといえるでしょう。

 

 

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