住宅ローン 【速報】日銀が再び利上げ 変動金利は1%の時代へ

昨日12月19日、日銀は金融政策決定会合において、政策金利を0.5% → 0.75%へ引き上げることを決定しました。

「利上げ」と聞くと、
「住宅ローンは大丈夫?」
「今すぐ何かしなきゃいけない?」
と不安になる方も多いと思います。

ただ、今回の決定は“高金利化”ではなく、“異常な低金利状態からの正常化プロセス”と位置づける方が適切と言えます。本記事では、
・今回の利上げで何が起きたのか
・住宅ローンにどう影響するのか
・家づくりを考える人はどう受け止めるべきか

を、住宅専門FPの視点で【速報】として整理します。

 

 


初めに:今回の利上げをどう捉えるか


今回の日銀の利上げは、「住宅ローンが急に危なくなる」政策ではありません。そもそも、金利が上がったり下がったりするのは経済の中では自然なことで、低金利がずっと続くことを前提に家を買う考え方自体は、決して安全とは言えません。私自身、これまでも「低金利が続く前提」での家づくりには慎重であるべきだとお伝えしてきましたが、今回の利上げは、その考え方がより現実的になった出来事だと感じています。

ただ現実には、低金利が長く続いたことで、「当面は大丈夫だろう」という前提で家づくりが進んできたのも事実です。今回の利上げは、その前提に見直しを迫る明確な節目です。

 


何が起きた? 今回の利上げを事実ベースで整理


 

■ 政策金利を0.5% → 0.75%へ引き上げ

日銀は、2025年12月の金融政策決定会合で、政策金利を0.75%に引き上げることを決定しました。この決定は、9人の政策委員全員一致によるもので、日銀内でも順当な判断だとされていると言えます。

 

■ 植田総裁の基本姿勢

日銀の植田総裁は、これまで一貫して、

  • 利上げは急がない
  • ただし、見通しが実現すれば調整を続ける
  • 現在の政策金利の水準でも、実質金利はなお大幅にマイナス

というスタンスを示しています。

今回の利上げも、「景気にブレーキをかけるため」ではなく、緩和的な金融環境の中で“アクセルの踏み方を調整する”ものという位置づけです。

 

■ 中立金利との関係

中立金利とは、「景気を過熱も失速もさせない、いわば“経済にとって無理のない”ニュートラルな政策金利の水準」。中立金利について、日銀は明確な数値を示していませんが、市場では1.0~2.5%程度と見られています。0.75%という水準は、
👉 中立金利に向かう途中、いわば“入口付近”

と言えます。

 


住宅ローン金利への影響は?
① 変動金利:時差を伴って影響が出る


 

変動金利は、政策金利の影響を受けますが、動くタイミングには時差があります。多くの金融機関では、変動金利は短期プライムレートを基準に決まりますが、

政策金利 → 短期プライムレート → 住宅ローン変動金利

という順番で、段階的に反映されていきます。

今回の政策金利の引き上げを受け、メガバンクが2026年2月を目安に短期プライムレートを引き上げる方向との動きが出ています。

これが実行されれば、

  • 変動金利は2~3月頃に0.25%前後上昇する可能性が高い
  • 現在0.7~0.8%台の金利は1%前後が一つの現実的な水準になる

と見ておく必要があります。

👉「まだ上がっていないから安心」ではなく、「上がる前提で備える段階に入った」という認識が重要です。

 


② 固定金利:長期金利の上昇基調に注意


固定金利は、政策金利そのものより長期金利(10年国債利回り)の影響を強く受けます。今回の利上げを受け、長期金利が一時2.0%を超える場面もみられるなど上昇しやすい状況が続いており、固定金利は「下がりにくく、上がりやすい」状況です。

👉1月の固定金利は、少なくとも12月より上がる可能性が高い
と見ておくのが無難でしょう。

 


住宅ローンを返済中・これから借りる人の心得
心得①:慌てない。でも「前提が変わった」ことは受け止める


今回の利上げで、住宅ローンの変動金利が年明け以降に利上げされる見込みです。ただ、変動金利には一般的に金利上昇の影響を緩和させる「5年ルール」が適用されます。金利の上昇に関わらず、ローンの返済額は借入から5年ごとに見直されるという仕組みで、金利が上がった場合は毎月の返済のうち元金分を減らして利息分を増やして返済額を上げないように調整します。そのため、ちょうど5年ごとの返済額見直しのタイミングでない限り、今すぐ家計を直撃することはありません

ただ、表面的な返済額は上がらなくても、金利が上がったことにより水面下では返済のペースが落ちることになるとともに、5年が過ぎ返済額を見直す際に一気に返済額が上がる可能性もあります(その場合でも、125%ルールにより返済月額はその前の期間の1.25倍までに抑えられますが)。もう、これまでのような低金利が永遠に続くと言われた“低金利神話”は完全に崩れました。

👉「慌てる必要はないが、金利環境が大きく変わった」という認識を持つことが大切です。

 


心得②:焦って「変動 → より低い変動」への借換えは意味がない


最近耳にするのが、「今より金利の低い変動金利に借り換えれば安心」という発想です。しかし、金利上昇局面では変動金利から変動金利への借換えは、ほぼ無意味です。理由は単純で、

  • これからは、どの銀行も変動金利を引き上げていく局面
  • 一時的に低く見える銀行でも、数か月後に逆転する可能性がある

からです。

実際、2025年12月には、業界最低水準とされていた三菱UFJ銀行が変動金利を先行して引き上げました。※詳しくはコチラの記事参照

👉「今いちばん低い」だけを理由にした借換えは危険という点は、強く意識しておきたいところです。

 


心得③:「変動か固定か」より「金利が上がっても耐えられるか」


これからの住宅ローンで重要なのは、

❌ どちらの金利タイプが得か
金利が上がっても家計が破綻しないか

という視点です。

そのためには、

  • 借入額は適正か
  • 金利が0.5%、1.0%上がった場合の影響
  • 教育費・老後資金を含めた将来支出

数字で把握しておく必要があります。

 


心得④:借換えは「金利当て」ではなく「意図・狙い」で決める


借換えをするなら、

  • 金利上昇リスクを止めたいのか
  • 団信を手厚くしたいのか
  • 家計の見通しを立て直したいのか

👉目的がはっきりしない借換えは、失敗しやすい。これは、FPとして強く感じる点です。

 


心得⑤:固定金利に借り換えるなら速やかな対応を


とにかく金利変動リスクを抑えたいということなら、固定金利タイプへの借換えを検討するのも一つの方法。以前よりも上がったとはいえ、フラット35は2025年12月現在で1.97%と、民間金融機関の固定金利タイプ(2%台後半)に比べてまだまだ割安です。ただ、長期金利も上がり基調のため、固定金利タイプに借り換えるならできるだけ速やかな対応をした方が良いでしょう。

ちなみに、国は2026年4月以降、子育て世帯向けに借換えでもフラット35の優遇を使える方向で検討中なため、金利水準や家族構成などによっては敢えて4月以降に借り換えた方が良い可能性もあります。

なお、金利変動リスクを抑えるには、借換ではなく繰上返済をして利息負担を下げるという方法もあります。返済中の住宅ローンの状況(残債、残期間)や家計の状況(収入、貯蓄、家族の状況など)に合わせて、適切な方法を検討しましょう。

 


まとめ:いま問われているのは「家計の構想力」


今回の日銀の利上げは、「今すぐ困る人」を生む政策ではありません。しかし、金利が動くことを前提に、住宅ローンや家計をどう考えるかいう点では、これまで以上に家計の「構想力」が問われる局面に入ったと言えます。

住宅ローン減税や各種補助金は、金利上昇のショックを和らげる助けにはなります。ただし、それらはあくまで“調整役”であって、将来の家計を守ってくれるものではありません。

大切なのは、

  • 金利が0.5%、1.0%上がったらどうなるのか
  • 教育費や老後資金と住宅ローンがどう重なるのか
  • その状況でも無理なく暮らし続けられるのか

こうした点を含めて、自分の家計全体をどう組み立てていくのかを考える力です。

その構想力を高めるための一つの有効な手段が、ライフプラン(キャッシュフロー表)の作成です。金利上昇のニュースに慌てて動くのではなく、この機会に一度、家計と住宅ローンの全体像を整理してみることをお勧めします。ご自身の住宅ローンや今後の家計に不安がある方は、ぜひ一度、家計とマイホーム相談室にご相談ください。

 

 

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家計とマイホーム相談室 草野芳史

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