住宅ローン 金利上昇時代にフラット35はどう変わる? 限度額アップ・借換え優遇・40年返済へ

前回のコラムでもご紹介した通り、日銀の政策金利引き上げが決まり、住宅ローンの金利環境は大きな転換点を迎えています。変動金利タイプについても2026年2月に1%程度。変動金利タイプについても、2026年2月頃には1%前後まで上昇する可能性があり、その後も利上げが続くとの見方が出ています。こうした変化を受けて、全期間固定金利タイプの住宅ローン「フラット35」が改めて注目されています。

そんな中、12月16日に国の補正予算が成立し、住宅金融支援機構からフラット35の制度変更に関する資料住宅金融支援機構のサイトはコチラ)が公表されました。すでに本コラムでは、

について速報でお伝えしてきましたが、今回の資料でそれらを含めた制度改正の全体像が見えてきました。

そこにはフラット35のあり方を大きく見直すといってもよい内容も含まれています。そこで、今回はこれまでの速報内容を踏まえつつ、
「何がどこまで固まったのか」
「なぜ今、この変更なのか」
「利用する側は何に注意すべきか」

を、ファイナンシャル・プランナーの視点で整理します。

 


1.はじめに


まず押さえておきたいのは、今回公表された内容の位置づけです。今回のフラット35の制度変更は、補正予算が成立したことを前提にした制度設計であり、「案」や「観測」ではなく、実施を前提とした内容と考えて差し支えありません。

もちろん、細かな運用ルールや開始時期の最終確定は今後ですが、方向性が大きく覆る可能性は低く、「制度はほぼ固まった」段階と見てよいでしょう。

 


2.今回の制度変更で何が変わるのか


今回のフラット35の見直しは単発的なものではなく、金利上昇時代を前提にした“まとめての制度調整”という印象です。主な変更点は次の4つです。

① 返済期間40年への延長

大きな変更点の一つが、返済期間を最長40年まで設定できるようになる点です。完済時年齢の上限は80歳なので、最長の40年返済をするには40歳までに借入する必要があります。民間金融機関ではすでに、35年 → 40年へと返済期間を延ばす商品が増えており、フラット35もこれに足並みをそろえる形です。

商品名にもフラット35とある通り、これまで最長35年という返済期間を一つの区切りとしていました(さらに長い返済期間の商品としてはフラット50があります)。それが、時代の変化を受けて大きくあり方を変える改正と言っても良いでしょう。

 

 ② 融資限度額の引き上げ

これまで最大8000万円だったフラット35の融資限度額が、最大1億2000万円へ引き上げられる予定です。建築費・地価の上昇により、従来の限度額では対応しきれないケースが増えてきたことが背景にあります。

建築費・地価の上昇によって住宅取得のハードルが上がる中、

  • 融資限度額の引き上げ
  • 返済期間の延長

をセットで行うことで、「借りられる金額」の柔軟性を高める狙いが見えます。

 

③ 借換えでも「子育てプラス」が使える方向へ

これまでフラット35の優遇は新規取得時のみが原則でしたが、今後は、子育て世帯に限り、借換えでも優遇を適用する方向で整理されています。これは、これまでのフラット35の考え方からすると、大きな政策転換と言えます。金利上昇局面で、「変動から固定へ移りたいが、条件が厳しい」という世帯への、明確な支援策です。

具体的な子育てプラスの要件は

・夫婦いずれかが40歳未満である世帯が対象
・18歳未満の子ども一人につき1ポイントとする
・1ポイントにつき0.25%の金利を5年間引き下げる

となります。

 

 

④ 床面積要件の緩和(50㎡以上へ)

今回、これまであまり注目されていなかった新しいポイントが、床面積要件の緩和です。フラット35の対象となる床面積が、70㎡だったところが50㎡以上までに緩和される方向が示されました。

これは、来年度予算案で検討されている住宅ローン減税における床面積要件の引き下げ詳しくはコチラ )と軌を一にする動きです。

  • 単身・DINKs世帯
  • コンパクトな都市型住宅
  • 中古マンション

といった住宅取得の実態に制度を合わせていく流れと捉えられます。

 

 


3.なぜ今、ここまで大きな見直しなのか


今回の制度変更を一言で言えば、「金利が上がる時代でも、住宅取得の選択肢を残すため」となります。

  • 日銀は低金利政策からの正常化を進めている
  • 変動金利は今後、段階的に上昇する可能性が高い
  • 民間の固定金利はすでに高止まりしている。
    (中には採算悪化により長期固定金利から撤退した金融機関もあります)

こうした環境の中で、全期間固定金利の“受け皿”としてのフラット35の役割を強化するというのが、今回の一連の見直しの本質です。

 


4.ただし注意!「借りやすさ」と「安心」は別物


ここで強調しておきたいのは、制度が使いやすくなること=安心して借りられることではないという点です。

  • 限度額が上がる
  • 期間が延びる
  • 要件が緩和される

ということは、裏を返せば、家計にとって負担の大きい借入も成立しやすくなるということ。制度が整えば整うほど、最終的な責任は、借りる側に戻ってきます。

 


5.いまこそ必要なのは「家計の構想力」


今回のフラット35の制度変更は、使い方次第で心強い味方にも、重い足かせにもなり得ます。重要なのは、「いくら借りられるか」ではなく「どこまでなら無理なく返し続けられるか」。

その判断には、ライフプラン(キャッシュフロー表)による家計の見通しが欠かせません。

  • 金利が上がったらどうなるか
  • 教育費・老後資金と両立できるか
  • 固定金利を選ぶ意味が本当にあるのか

こうした点を整理した上で、フラット35を「家計の中でどう位置づけるか」を考えることが、これからの住宅取得には不可欠です。

 


6.まとめ


今回の補正予算によるフラット35の見直しは、金利上昇時代における住宅取得の選択肢を残すための制度調整です。一方で、借りやすくなるからこそ、家計の構想力が、これまで以上に問われる時代にもなりました。

制度をどう使うかではなく、自分の家計にとって、その制度が本当に合っているのか。その視点を持つことが、これからの住宅ローン選びで最も大切なポイントです。

 

 

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