7月31日の日銀の政策金利引上げに端を発した株価や為替などのマーケットの乱高下も、日経平均株価は36,000円前後、ドル・円は147円前後、長期金利(日本の10年モノ国債の利回り)は0.8%台と、この先揺り戻しはあるかもしれませんが落ち着いてきました。そこで改めて、今回のマーケットの乱高下から見える、住宅ローンへの影響を考えてみたいと思います。
基本的な方向としては、日銀はアベノミクス下で行われていた異次元金融緩和を脱し、今後は金融政策の正常化に向かっていきます。そのためこれまでのような極端な低金利は終わりに向かい、「金利のある世界」へとなっていきます。とはいえ急激な利上げが経済に混乱をきたすことになるため、日銀は徐々に金利を上げていく方向になります。その第一歩として、0.3%といったネットバンクを中心としたキャンペーンの変動金利については、利上げの動きが出ています。政策金利が0.5%に引き上げられれば、メガバンクや地銀、信金にも同様の動きが出てきて、政策金利が1.0%になったら変動金利は1%台後半まで上がる可能性はあります。
ただ、今回のマーケットの乱高下により、日銀の次の政策金利の利上げ(0.5%)は来年以降になりそうです。こういった状況により「やっぱり変動金利は上がらないんじゃないのか」と思う人もいるかもしれませんが、それは早計です。これには二つの理由があります。一つ目は、日銀としてもいまの低金利では金融政策でやれることの幅が狭すぎるので、景気などの環境さえ整えば金融政策の正常化=利上げしたいという考えがあるということ。
そして二つ目が、日本国内の経済情勢だけでは金融政策を行えないということ。もし金融政策が日本国内だけで完結してよいのであれば、景気状況を見て利下げを遅らせることも出来るでしょう。ただ、今回の政策金利の引上げは、行き過ぎた円安によるインフレを是正するという狙いもあったと考えられ、その狙い通り円高に振れました(その効果が効きすぎて円高が一気に進んだことは、日銀の意図とは少し違うでしょうが)。今回、日銀の思惑以上にマーケットが乱高下したのは、日米の金利差を活かした「円キャリートレード」の影響も大きかったと言われています。機関投資家が低利の円で資金を調達し、アメリカなどの金利の高い国で運用することで、運用益と為替差益を狙うという取引です。が、金融緩和で金利の低かった日本が利上げをし、金融引締めで金利の高かった欧米が利下げをすることで日米の金利差が縮まってしまえば、根底から収益構造がひっくり返ってしまうので、マーケットが過剰に反応してしまった訳です。
マーケットがグローバル化した中では、国内と海外とで極端に違う金融政策を行うと、今回と同じようなことが起こりかねません。このような点から今後、日本においても欧米各国の水準と大きく乖離するような極端な低金利政策を続けることが難しくなり、住宅ローンの金利も利上げ圧力が続くと思われるのです。日本国内の状況だけを見て「住宅ローンの変動金利は上がらない」などというのは通用しなくなるのではないでしょうか。
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名古屋駅前の住宅専門ファイナンシャルプランナー
家計とマイホーム相談室 草野芳史
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