マイホームの新築時にご相談頂いたお客さまから、このところの住宅ローン、特に変動金利タイプの金利上昇についてのお尋ねがありました。その方は、金利上昇リスクを抑えるために、長期固定金利タイプと変動金利タイプのミックス金利タイプで借入されています。借入は日銀のマイナス金利政策解除前の2023年の年末ということで、今とは比べ物にならない低金利で長期固定金利で借り入れできました。ただ、利息を抑えるために一部変動金利タイプにしているので、昨今の金利上昇が気になるとのことでした。この方と同じく、現在変動金利タイプで借りている方は、「いつ上がるの?」「どう対処したらいいの?」と戸惑いを感じているかもしれません。そこでこの記事では、現在住宅ローン返済中の方に向けて、「変動金利上昇時の注意点と対応のポイント」を分かりやすくお伝えします。
1.【変動金利とは】半年ごとに金利は見直されるが、返済額は5年ごとにしか変わらない
変動金利タイプの住宅ローンは、通常年2回(4月・10月)に基準金利の見直しが行われます。ただし、金利上昇が家計に与える影響を緩和するために、実際に返済額が変更されるのは一般的に「5年に1度」と決まっており、急激に月々の支払いが増えることはありません。
さらに、5年ごとの見直しの際に返済額が上がる場合も「直前の返済額の1.25倍まで」という上限(125%ルール)が設けられているため、一定の緩和効果が備わっています。これら二つの緩和措置があるので、現在金利が上がっている変動金利タイプの住宅ローンを返済中だからといって、焦って繰上返済や借換えを検討する前に、まずは現在の住宅ローンの契約内容を正確に把握しましょう。
2.【最近の住宅ローン金利動向】2024年3月の日銀政策変更以降、じわじわ上昇中
2024年当初の変動金利は0.4%前半も珍しくなく、中には0.2%を切るような金融機関もありましたが、日銀が2024年3月にマイナス金利を解除して以降、金融機関の店頭金利や基準金利にも変化が現れています。例えば、メガバンクでは2024年4月から変動金利の基準が0.1%程度引き上げられ、地方銀行や信用金庫でも同様の動きとなっています。
ただし、実際の「適用金利」は金融機関ごとの優遇幅により抑えられており、2025年7月時点の変動金利は0.7%~0.8%程度がよく見られますが、0.5%台というケースもあります。金利上昇といっても金融機関ごとに差があるとともに、段階的な動きであることを冷静に受け止めましょう。
3.【見直しの前に】まずは現在の住宅ローン契約内容を再確認
金利が上がったと聞いて慌てて動く前に、住宅ローンの契約書類や返済予定表で、まずご自身の住宅ローンの内容を確認しておきましょう。確認すべきポイントは以下のとおりです。
- 適用金利(現在の利率)
- 金利タイプ(変動/固定期間選択型/全期間固定)
- 次回の返済額見直し時期
- 優遇金利の条件や期間
10年固定金利タイプのように、「優遇金利期間が終わると、いきなり金利が跳ね上がる」というケースもあります。自分の契約がどうなっているか、しっかり把握することが第一歩です。
4.【借換え・繰上返済の検討】タイミングを見誤らず、専門家に相談を
金利上昇を見越して「今のうちに借換えしよう」「繰上返済で元本を減らそう」とお考えの方も多いかもしれません。ただし、借換えには諸費用がかかりますし、繰上返済にもメリット・デメリットがあります。
- 借換えには手数料・登記費用など数十万円のコストが発生
- 繰上返済は将来の金利上昇リスクを減らせるが、手元資金を減らすリスクもある
こうした判断は、「今後の金利予測」や「ライフプラン」も踏まえて行うべきです。住宅ローンに詳しいファイナンシャル・プランナーに相談し、数字に基づいた判断をするのが安心です。
5.【今後の見通し】急激な上昇よりも“緩やかな上昇”の可能性が高い
今後の金利については、急激に上昇するよりも、緩やかな上昇が続くという見方が多くなっています。2024年以降、日銀は段階的な金融正常化を進めていますが、景気やインフレの動向を見ながら慎重な姿勢を維持しています。
2025年中に再び利上げがある可能性はありますが、ごく短期間で1%以上の急騰というのは考えにくいのが現状です。ただ、日銀の目指す金融正常化の流れの中で、数年後には変動金利タイプが2.0%を超す可能性もゼロではありません。そうなる前に何らかの対応を検討した方が良いでしょう。
まとめ:慌てず、まずは「現状把握」と「正しい判断」から始めましょう
金利が上がるというニュースを聞くと不安になりますが、変動金利タイプの住宅ローンには「5年ルール」「125%ルール」といった緩和措置があり、返済額が即座に大きく増えるわけではありません。
大切なのは、まず自分の契約内容をきちんと確認し、金利上昇が家計にどう影響するかを冷静に見極めることです。
借換えや繰上返済を検討する場合も、一人で判断せず、住宅ローンに詳しい専門家に相談することをおすすめします。
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マイホーム購入前に、中立な第三者にご相談を!
名古屋駅前の住宅専門ファイナンシャルプランナー
家計とマイホーム相談室 草野芳史
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