9月も半ばを過ぎ涼しくなってきましたが、物価上昇は相変わらず止まらず、家計への不安が落ち着かないという方も多いと思います。そんななか、先日の記事でもご紹介した通り、日米で大きな金融政策の会合が立て続けに行われました。日本銀行は9月18日・19日にかけて、アメリカの中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)はFOMC(公開市場委員会)を9月16日・17日に開催。その決定内容は、今後の住宅ローン金利を考えるうえでも無視できません。そこで、今回の決定内容と背景、そしてこれからの見通しを分かりやすく整理してみます。
日銀は金利据え置き、資産の売却を開始
日本銀行は、短期の政策金利を「0.50%」で据え置きました。ここでいう「政策金利」とは、銀行同士が一晩だけお金を貸し借りするときの基準となる金利で、変動金利タイプの住宅ローンに直結する短期金利の目安です。
金利自体は動かしませんでしたが、注目すべきは「資産の売却」に踏み切ったことです。これまで日銀は、景気を下支えするために株価指数連動の投資信託(ETF)や不動産投資信託(J-REIT)、国債などを大量に買い入れてきました。今回はその一部を市場に売り出すという決定で、いわば「これまで膨らませてきた資産を少しずつ元に戻していく」流れに入ったといえます。
さらに、政策決定会合では2人の審議委員が「0.75%への利上げ」を主張するなど、日銀内部でも「金利を上げていくべきだ」という声が強まってきました。
米国は0.25%の利下げ
一方アメリカのFRBは、政策金利を0.25%引き下げました。もともと4.25~4.50%の幅で設定されていたものを、4.00~4.25%に下げた形です。「利下げ」とはお金を借りやすくする政策で、景気の減速を食い止めるために行われます。アメリカでは物価上昇率が落ち着きつつある一方で、雇用の勢いがやや鈍ってきています。そこで、景気の腰折れを避けるためにいち早く舵を切ったわけです。
ただし同時に、FRBは国債などの資産を市場に返していく「量的引き締め(QT)」は続けています。これは金融環境を引き締める方向の動きなので、単純に「緩和に戻った」とは言い切れません。
日米の姿勢は「正反対」
今回の決定を並べてみると、日本は「まだ利上げに慎重だが、資産縮小で正常化を進める」スタンス。対してアメリカは「利下げに転じ、景気の下支えを優先」しています。方向性としては真逆です。この違いは、住宅ローン金利にも少なからず影響してきます。
住宅ローン金利への影響
[変動金利タイプ]
日本の政策金利が0.50%で据え置かれたため、当面は大きな動きはありません。ただし、早ければ年内から年明け以降にかけて政策金利が引き上げられる可能性もあり、今後の方向性を注視する必要があります。変動金利を選ぶ方は、金利が上がった場合でも返済が続けられるかどうか、ライフプランをもとに家計をシミュレーションしてみることが大切です。
[固定金利期間選択タイプ・全期間固定金利タイプ]
これらは「長期金利(日本の10年モノ国債の利回り)」に連動します。日銀が国債の買入れを減らし、さらにETFやREITの売却を進めることで、長期金利には上昇圧力がかかりやすい状況です。そのため、フラット35を含め固定金利タイプは今後も利上げの可能性があると考えておく必要があります。
[フラット35]
フラット35も長期金利の影響を受けるため、上昇基調に巻き込まれやすいです。アメリカが利下げに転じたからといって、日本の長期金利が下がるとは限らず、むしろ世界的な資金の流れ次第では上がる可能性もあります。
為替の影響も無視できない
アメリカが利下げ、日本は据え置き。この組み合わせは理屈の上では「円高」に働きやすいです。円高になると輸入物価が落ち着くため、国内の物価上昇(インフレ)が抑えられ、結果的に日銀の利上げを先延ばしする可能性があります。ただし、アメリカの金融政策の全体像や世界的な資金の流れ次第で、為替は一方向には動かない点に注意が必要です。
今後の見通しと行動のヒント
今後の日本では、固定金利と変動金利でそれぞれ異なる動きを想定する必要があります。
- 変動金利:政策金利の動向によります。年内から年明けにかけて政策金利の引き上げが予想されており、早ければ変動金利にも影響が出てくるかもしれません。
- 固定金利:長期金利の動向によって決まります。国債の買入減やETF・REIT売却による利上げ圧力が強まるため、フラット35を含む固定金利は利上げの可能性があります。
住宅ローンを検討する際は、将来の金利上昇に備え、自分の家計にどこまで余裕があるのかをシミュレーションしておくことが欠かせません。
まとめ
今回の日米の金融政策は「日本は資産縮小で正常化を進める」「アメリカは利下げで景気を支える」という正反対の方向性でした。これにより、日本の固定金利は今後上がりやすく、変動金利も当面は安定しているように見えて、早ければ年明け以降に利上げの可能性があります。
住宅ローンの選択に正解は一つではなく、ご家庭のライフプランや家計の体力によって答えは変わります。迷ったら、まずは「変動・固定・ミックス」の3案を比較して、返済総額と金利上昇リスクを見える化してみましょう。ご不安な方は、家計とマイホーム相談室の「マイホーム予算診断」をお勧めします。
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名古屋駅前の住宅専門ファイナンシャルプランナー
家計とマイホーム相談室 草野芳史
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