住宅ローン 変動金利はいくら上がる? 5年ルール後を試算してみる

前回のコラムでは、変動金利タイプの住宅ローンには、金利上昇時の影響を和らげる「5年ルール」「125%ルール」という“安全装置”があることを解説しました。

金利が上がっても一定の条件下(5年間)は返済額は変わらないという“安心”はありますが、5年の間に大きく金利環境が変わってしまった場合、返済額が1.25倍を上限として一気に上がり驚いてしてしまう可能性があります。

そこで今回は、「5年ごとの返済額の見直し時期に、実際にどれくらい金利が上がると、返済額はいくら増えるのか?」を、具体的な数字で確認してみます。
※前回の試算は、当初5年間が0.4%、6年目に一気に1.0%に上がるという条件でしたので、今回の試算とは少し数字がズレます

 


今回の試算条件


実際の返済額は条件によって異なりますが、ここでは「比較のためのモデルケース」として、次の条件で試算します。

試算条件
借入額:5,000万円

・返済期間:35年
・返済方法:元利均等返済
・ボーナス返済:なし
・借入開始:2021年3月(2026年4月に5年経過)

次回の見直し時期の2026年4月に5年ごとの見直しを行うということで、2021年3月に返済がスタートしたと想定します。この2021年3月当時、変動金利は0.4%程度で、その後2024年10月に0.55%程度、2025年4月以降は0.80%程度になりましたが、システムの都合上1年単位でしか試算できないので、金利は下記の通りとします。
・1~4年目:0.40%
・5年目 :0.70%
・6年目 :1.00%

 


5年ルール後、返済額はどれくらい上がる?


今回の試算は、住宅金融支援機構のシミュレーターを用い、変動金利として5年ルール・125%ルールをちゃんと反映させました(シミュレーターによっては、変動金利の5年ルールや125%ルールを反映できないものの少なくありません)。

その試算結果は次の通りです。
返済当初(最初の5年間) → 127,595円/月
・6年目以降(見直し後) → 139,626円/月

👉 毎月 約12,000円増
👉 年間では 約14万円以上の負担増

この試算は5000万円の借入れの場合ですので、借入額が少なくなったり繰上返済をしていれば、負担増は減ります。逆に言えば、借入額が大きいと、返済額への影響はもっと大きくなります。

 


なぜ“急に”上がったように感じるのか


ここが、変動金利で多い誤解ポイントです。5年ルールがあるため、金利が上がっても返済額は5年間据え置かれます。

しかしその間、
・金利は半年ごとに見直され
・毎月の返済額の内訳は、利息が増え、元金が減りにくくなる
という変化が、水面下で進んでいます。

そして5年後、金利が上がった状態でまとめて返済額が見直されるため、「いきなり上がった」と感じやすいのです。

 


125%ルールの上限はどの水準か


それでは、125%ルールの上限である当初5年間の返済額の1.25倍まで返済月額が上がる時は、金利がどれぐらい上昇している場合なのかを、先ほどの条件で試算してみました。その結果は
・6年目の金利が 約1.96% まで上がった場合
となりました。もちろん、2026年4月にそこまで上がる可能性は高くありません。

でも、
・日銀の金融政策がさらに「金利のある世界」へ進み
・今後5年の間に段階的な利上げが続く場合
これから5年ごとの返済額見直しを迎える人ほど、返済額が大きく上がる可能性は高くなります。つまり、125%ルールは「返済額の上限」ではありますが、「家計が楽になる仕組みではない」点に注意が必要です。

 


いま考えておきたい視点


今回の試算は、あくまで一例です。
・実際の金利は月単位で変動します
・繰上返済の有無でも結果は変わります

それでも、
・5年ルールがあるから安心
・当面は何もしなくていい
と考えるのは、やや危険です。

金利が上がる・下がるを当てることよりも重要なのは、
・今の住宅ローンの条件はどうなっているか
・返済額が1.2倍~1.25倍になっても耐えられるか
・その状態が数年続いても、家計は回るか
という 「家計の耐久力」 です。

その確認には、ライフプラン(キャッシュフロー表)によるチェックが必要です。

 


まとめ:慌てず、数字で考える


変動金利の上昇は、5年ルールや125%ルールのおかげで「今すぐ破綻する話」ではありません。ただし、
・影響は 後から遅れて出る
返済額は 確実に上がる
という性質があります。

慌てて借り換えたり繰上返済する前に、
1. いまのローン条件を確認する
2. 次の返済額見直し時期を把握する
3. 家計全体で耐えられるかを点検する
この順番で考えることが、金利上昇時代に後悔しないための基本と言えます。ライフプラン(キャッシュフロー表)の作成や住宅ローンの相談は、家計とマイホーム相談室にお気軽にお知らせ下さい。

なお、借換えについては、こちらの記事もあわせてご覧ください。
「やってはいけない借換え3選 金利が上がる今、住宅ローンの正解は?」

 

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