税金・制度 大学生の年金、親が払う? 学生納付特例の仕組み

先日、20歳の誕生日を迎えた息子と一緒に年金事務所へ行ってきました。何をしに行ったのかというと、国民年金の「学生納付特例制度」について説明を聞き、今後どうするか考えるためです。長男はいま大学2年生。収入はアルバイト程度ですから、毎月の国民年金保険料を自分で支払うとなれば、かなりの負担になります。

かといって、親である私が代わりに払うこともしません。せっかく20歳になったのですから、「年金とは何なのか」「なぜ加入するのか」「払えないときにはどうすればよいのか」を本人に知ってもらう、よい機会だと考えたからです。

今回は、わが家のそんな出来事をきっかけに、大学生などが利用できる「学生納付特例制度」について整理してみます。

 


1.学生納付特例制度のポイント


最初に、制度の要点をまとめておきましょう。
・日本国内に住む20歳以上60歳未満の人は、原則として国民年金に加入する
・2026年度の国民年金保険料は月額17,920円
・学生で本人の所得が一定以下なら、申請によって在学中の保険料納付を猶予できる
・猶予された期間は、老齢基礎年金を受け取るための「受給資格期間」には入る
・ただし、追納しなければ、将来受け取る老齢基礎年金の金額には反映されない
・学生納付特例の承認期間は、障害基礎年金などの受給要件を判定する際には対象期間になる
・猶予された保険料は10年以内なら追納できる

つまり、学生納付特例は単純に「学生なら年金を払わなくてよい制度」ではありません。学生の間はいったん支払いを待ってもらい、社会人になってから追納するかどうかを考える制度と捉えると分かりやすいでしょう。

 


2.そもそも20歳になるとなぜ国民年金に入るのか?


日本国内に住む20歳以上60歳未満の人は、原則として国民年金に加入します。学生だから加入しなくてよい、という仕組みではありません。

2026年度の国民年金保険料は月額17,920円です。1年間なら単純計算で約21万5,000円になりますから、アルバイト収入が中心の大学生にとっては決して小さな金額ではありません。

そこで設けられているのが「学生納付特例制度」です。本人の前年所得が一定以下であれば、申請によって在学中の国民年金保険料の納付を猶予してもらえます。2026年8月時点の所得基準は、128万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等となっています。

なお、ここでいう「所得」は、アルバイトなどで受け取る「収入」と同じではありません。給与収入の場合には、給与所得控除などを差し引いた後の金額で判定されます。

また、審査されるのは原則として学生本人の所得です。親の所得が高いから利用できない、という制度ではありません。

 


3.「免除」ではなく「納付を猶予する制度」


学生納付特例について、特に誤解しやすいのがここです。名前からすると「学生だから年金保険料を免除してもらえる制度」のようにも見えますが、正確には納付を猶予する制度です。

学生納付特例が認められた期間は、将来老齢基礎年金を受け取るために必要な受給資格期間には含まれます。一方で、そのまま追納しなければ、その期間は老齢基礎年金の金額を計算する際には反映されません。

例えば大学在学中の2年間について学生納付特例を使い、その後も追納しなければ、その2年間分だけ将来の老齢基礎年金は少なくなります。日本年金機構によると、学生納付特例の期間を1年分追納すると、現在の年金額ベースでは老後の年金額が年間約2万円増える目安とされています。

ですから、「学生だから払わなくて済んだ。ラッキー」で終わる話ではありません。

今はいったん払わず、将来の年金額を少ないままにするのか、それとも社会人になってから追納するのか。そこまで含めて考える制度です。

 


4.10年以内なら後から「追納」できる


学生納付特例を利用した期間については、10年以内であれば後から保険料を支払う「追納」ができます。追納すれば、その期間は最初から保険料を納めていた場合と同じように老齢基礎年金額へ反映されます。

ただし、学生納付特例の承認を受けた年度の翌年度から数えて3年度目以降に追納すると、当時の保険料に一定の加算額が上乗せされます。そのため、「10年以内ならいつ払っても同じ」というわけではありません。

就職して収入や貯蓄に余裕が出てきた時点で、「追納するか」「その資金を貯蓄や資産形成に回すか」を考えてもよいでしょう。なお、追納した保険料は社会保険料控除の対象になるため、将来の年金額だけでなく税負担も含めて考える必要があります。

ここには万人共通の正解はありません。老後の公的年金を少しでも厚くしたいなら追納する意味がありますし、若いうちは生活防衛資金づくりや奨学金の返済、資産形成などを優先したいという考え方もあります。

FPとしては、単純な「得か損か」だけではなく、その時点の収入や貯蓄、今後のライフプランを見ながら判断することをおすすめします。

 


5.実は大切なのは「老後の年金」だけではない


今回、息子と年金事務所へ行って、あらためて伝えておきたいと思ったのがこの点です。若い人にとって、「65歳になったときにもらう年金」の話をしても、なかなか現実感は湧きません。20歳の学生から見れば、65歳は45年も先です。

しかし、公的年金には老後の生活費という役割だけではありません。病気や事故などで一定の障害が残った場合には「障害基礎年金」、加入者が亡くなった際、一定の要件を満たす遺族には「遺族基礎年金」という保障もあります。

つまり年金は、単なる「老後のための積立制度」ではなく、長生き・障害・死亡といった人生上のリスクに備える社会保険なのです。

学生納付特例の承認を受けている期間は、障害基礎年金などの受給要件を判定する際、保険料納付済期間と同様に対象期間として扱われます。反対に、何も手続きをせず「未納」のままにしてしまうと、事故や病気で障害が残ったときに障害基礎年金を受け取れない可能性があります。

学生納付特例を利用するのであれば、「払わないこと」よりも「きちんと申請して未納にしないこと」の方が重要なのです。

 


6.親が代わりに払う方法もある。でも、わが家では払わないことにしました


大学生の国民年金については、親が代わりに保険料を払う家庭もあるでしょう。それ自体はもちろん一つの考え方です。

親が、生計を一にする子どもの国民年金保険料を実際に負担した場合、その保険料を親の社会保険料控除の対象にできるため、税負担を軽くできるケースもあります。経済合理性だけで考えれば、親が払っておくという選択も十分にあります。

ただ、わが家では今回はそうしませんでした。20歳は成人です。これから就職し、給料を受け取り、税金や社会保険料を支払い、自分でお金を管理していくことになります。

だからこそ、「年金保険料はいくらなのか」「払えないとどうなるのか」「免除と猶予はどう違うのか」「将来はどんな年金を受け取るのか」といったことを、一度本人に考えてもらいたいと思いました。

私が手続きを全部済ませて保険料まで払ってしまえば、本人にとって年金は「親が何かやってくれたもの」で終わってしまいます。それよりも、せっかく届いた20歳の国民年金の案内を、金融教育の教材として使ってみる。そんな考え方があってもよいのではないでしょうか。

 


7.学生納付特例はどうやって申請する?


学生納付特例は自動的に適用されるわけではなく、申請が必要です。2026年8月時点では、住所地の市区町村役場の国民年金窓口や年金事務所のほか、対象となる学校で申請できる場合があります。また、マイナポータルを利用した電子申請にも対応しています。

申請には、学生証の写しや在学証明書など、学生であることを確認できる書類が必要です。原則として4月から翌年3月までを一つの年度として審査するため、在学中に複数年度にわたって学生納付特例を利用する場合は、年度ごとの申請が必要です。翌年度も引き続き在学予定の場合には、日本年金機構から送られる申請用はがきなどで手続きできるケースもあります。

また、申請時点から2年1カ月前までの期間で、まだ保険料の納付期限から2年を経過していなければ、さかのぼって申請できる場合もあります。

とはいえ、「あとから手続きすればよい」と放置するのはおすすめできません。申請前に事故や病気が起こると、その時点の納付状況によっては障害基礎年金を受給できなくなる可能性があるためです。20歳になって国民年金の案内が届いたら、早めに確認しておきましょう。

 


8.まとめ 20歳は「年金を自分事として考える」よい機会


今回、息子と年金事務所へ行った最大の目的は、単に学生納付特例の手続きをすることではありませんでした。20歳になったのをきっかけに、「社会に出ると、税金や社会保険とどう付き合っていくのか」を考えてもらうことでした。

公的年金制度については、「将来本当にもらえるのか」「払った方が得なのか」といった議論もあります。しかし、公的年金は老後資金だけではなく、障害や死亡などにも備える社会保険です。単純な「得か損か」だけで判断するものではありません。

学生納付特例を使うか、親が代わりに払うか、本人が支払うか。家庭によって答えは違います。大切なのは、何となく親任せにしたり、面倒だから未納のまま放置したりせず、本人が制度を理解したうえで選ぶことではないでしょうか。

わが家でも、今回の学生納付特例が息子にとって「年金って何だろう?」と考える最初のきっかけになれば、それで十分だと思っています。

 


FAQ 学生の年金でよくある疑問


Q1.学生なら国民年金に入らなくてもよいですか?

いいえ。日本国内に住む20歳以上60歳未満の人は原則として国民年金に加入します。学生納付特例は「加入しなくてよい制度」ではなく、保険料の納付を猶予する制度です。

Q2.親の年収が高くても学生納付特例を利用できますか?

原則として利用できます。学生納付特例では本人の前年所得が審査対象となり、家族の所得は原則として問われません。

Q3.学生納付特例を使ったら、将来の年金は減りますか?

追納しなければ、その期間は老齢基礎年金額の計算に含まれないため、すべて納付した場合より将来の年金額は少なくなります。ただし、10年以内であれば追納できます。

Q4.何もしないで未納にするのと何が違うのですか?

大きく違います。学生納付特例が承認された期間は老齢基礎年金の受給資格期間に入り、障害基礎年金などの受給要件を判定する際にも対象期間となります。一方、未納のままでは、こうした扱いを受けられない可能性があります。

Q5.親が払うのと学生納付特例を使うのは、どちらがよいですか?

どちらが正解とは一概にいえません。親が保険料を支払えば、一定の要件を満たす場合には親の社会保険料控除の対象になり、将来の老齢基礎年金額も減りません。一方、学生納付特例を利用すれば現在の負担を抑え、社会人になってから追納するかどうかを本人が判断できます。家計の状況だけでなく、本人にお金や社会保障について考えてもらう機会にするなど、家庭ごとの考え方も含めて選ぶとよいでしょう。

 

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名古屋駅前の住宅専門ファイナンシャルプランナー
家計とマイホーム相談室 草野芳史
https://my-home-fp.com/
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