資金計画 条件が緩和される社内融資利用時の住宅ローン控除とその注意点

平成29年度の予算案や税制改正が議論されています。
住宅・不動産税制については比較的地味目なものが多い印象ですが、
それでもいくつか改正が検討されています。
その一つが、社内融資利用の際の住宅ローン控除の適用要件
最近は民間金融機関の住宅ローンの低金利化が進んでいるものの、
企業によっては好条件の社内融資もあり、
先日は固定金利タイプで0.75%という破格なお話しもありました。
ただ、そのような好条件だと引っかかるのが、住宅ローン控除。
現行制度では、「使用者又は事業主団体から、
使用人としての地位に基づく無利子又は1%未満の利率による借入金等」は
住宅ローン控除の対象外となっているのです。
ですので、前述の条件だと、せっかく借り入れをしても
住宅ローン控除を利用できないのです。
社内融資制度を持っている企業の会社員であれば、
所得も相応に高い方が多いでしょうから、
住宅ローン控除を利用できないというのはもったいない話です。
それが、平成29年度の税制改正大綱では、
「給与所得者等が使用者等から使用人である地位に基づいて貸付けを
 受けた住宅借入金等のうち、住宅借入金等を有する場合の個人住民
 税額の特別控除の控除額に係る特例の対象とならない住宅借入金等
 に係る利率を0.2%未満(現行1%未満)に引き下げる
とされています。
さらに「上記の改正は、平成29年1月1日以降に居住用家屋を自己の
居住の用に供する場合について適用する」とありますので、
無事に成立すれば、今年の1月1日に遡って適用される見込みです。
社内融資利用者にとっては福音ですね!
ただ、社内融資を利用して住宅ローン控除の適用を受ける場合、
一般の民間住宅ローンにはない注意点があります。
それは土地と建物のどちらに社内融資を充てるかということ。
支払いの仕方によっては、
住宅ローン控除が利用できない可能性があるのです。
なぜ、そのようなことが起こるのか?
社内融資利用時に住宅ローン控除を利用するためには、
前述の金利(現行で1%以上)以外に、
「その借入金の貸付けをした者又はその敷地の譲渡の対価に係る
 債権を有する者のそれらの債権を担保するために新築住宅を
 目的とする抵当権の設定がされたこと
との要件があるのです。
社内融資では「無担保」、すなわち土地や建物に抵当権を
付けなくて済むケースが多く、それが借入者にとっても有利なことなのですが、
その場合、住宅ローン控除の対象にならなくなってしまうのです。
ただし、「給与所得者の使用者に対する住宅の新築や取得の対価、
その住宅と一括して取得したその住宅の敷地の取得の対価又は
増改築等に要する費用に係る債務」との記載もあります。
これは、建売住宅やマンション、中古住宅など、
土地と建物をまとめて購入する場合は、
社内融資に抵当権が付いていなくても良いということになります。
では、どういう時に注意が必要なのか?
というと、それは土地を購入して注文住宅を建てる時
下図のように、土地の購入時に社内融資を利用し、
その社内融資に抵当権が付かないと住宅ローン控除の対象外となります。
社内融資_不可-1.jpg
下図のように、土地を社内融資で購入後、
建物の費用も社内融資で支払った場合でも、無担保であれば
土地の分の社内融資は住宅ローン控除の対象外となります。
(建物分の社内融資は住宅ローン控除の対象)
社内融資_不可-2.jpg
ですので、社内融資を利用して土地購入+注文住宅の場合、
土地の支払いは自己資金、もしくは民間の住宅ローンを利用し、
建物の支払いに社内融資を充てる等の必要があるという訳です。
社内融資_可.jpg
(民間の住宅ローンは土地代だけではおりませんので、
 建物の支払いは社内融資と民間ローンの併用になります)
税制改正でより使いやすくなる社内融資ですが、
こんな点にもご注意ください。
なお、ここでご紹介したのはあくまで概要であり、
他にも適用要件があります。
制度の詳細や実際に適用できるかどうかは、
税務署もしくは税理士にご確認下さい。

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