家計 年金不安の正体?! 海老原嗣生さんにお話お聞きしました

先日、「年金不安の正体」(ちくま新書)の著者、海老原嗣生さんの講演をお聞きしてきました。

 

 

海老原さんは、リクルートのご出身で、雇用や就活を専門とするジャーナリストで、著書も多数お出しになっています。年金制度についても造詣が深く、上記著作の出版を記念して名古屋でも講演いただくことになりました。ファイナンシャルプランナーとしても、「老後資金・年金」は6つの分野のうちの重要な一つであり、興味深くお話をお聞きしました。懇親会では隣に座ってさらに詳しくお話をお聞きしましたが、日本の年金制度についていろいろ考えさせられました。

 

 

日本の年金というと、「老後資金2000万円不足問題」が記憶に新しいですよね。この2000万円問題については、選挙がらみで「年金が足りない」「年金制度が破綻する」という論調も見受けられましたが、そもそも老後資金を年金だけで賄おうという発想自体が間違いであり、老後資金として年金以外に2000万円(FPの教科書的には、よりゆとりある生活をするためには3000万円ともいわれます)が必要ということは以前から言われていました。

 

この問題をごくごく簡単にまとめると、下記の表の通り、統計上、老後の生活費が、もらえる年金額を毎月5.5万円オーバーしていて、その不足額が30年間で(5.5万円×12か月×30年)で1980万円になってしまうというお話。

 

 

この試算はあくまで一つのモデルケースに過ぎず、生活費も年金額も家庭によりさまざまであり、年金額や貯蓄に合わせて生活を変えればよいだけの話。老後の生活を国が全部面倒を見てくれるというものではありません。上記資料も、もともとの出典は総務省の家計調査(2017年)であり、それを厚生労働省が引用し、それをさらに金融庁が引用しただけであり、金融庁がいいたいのは、自分たちで出すべき老後の資金を、若いうちからコツコツと用意すべきであり、その方法として「積み立てで投資運用をしましょう」ということなのです。

 

・・・話がちょっと脱線しましたが、年金制度はいつでもメディアを中心に「破綻する」と言われていますが、全くそんなことはない、というのが海老原さんのお話。「積立金の運用損で破綻する」「賦課方式は成り立たない」「制度設計が甘かった」といった誤解に、これまでの制度が出来た経緯や変遷、各種統計などを用いて説明されていました(民主党の政権を取る前と後の主張の変わりようなど、笑い話のようです)。詳しくは、海老原さんの著書(Amazonはコチラ)をご覧いただければ分かるので、ここでは一つだけ、海老原さんのご了解のうえご紹介します。

 

老後にもらえる老齢年金は、原則として65歳からもらえます。ただ、必要に応じて受け取る年齢を60歳まで繰り上げたり、70歳まで繰り下げすることも出来ます。60歳に繰り上げすれば毎月の受給額が65歳から受け取った場合の70%に減り、70歳に繰り下げたら65歳から受け取った場合の142%に増えます。そこであらかじめ、年金の受給開始年齢を70歳からにするようにライフプランを立てて準備をしておけば、老後の家計が大きく好転するというのが海老原さんのお話です。5年待つだけでこれだけもらえる金額が増えるわけですから、とても投資効果の高いおトクな話だと言えます。

 

 

ただし、気になる点が二つあります。一つ目は費用対効果。年齢が65歳を超えると、いつ身体に何が起こるか分かりません。もらえる年金額が高くなっても、もらえる期間が短くなったら、もらう年金の総額は下がるかもしれません。例えば65歳から受け取る場合の年金月額が20万円なら、70歳まで受給を待てば年金月額は28.4万円になります。試算すると、下記の表の通り、82歳になればもらう年金の総額が逆転します。

 

 

日本人の2018年の平均寿命が、女性87.32歳、男性81.25歳ですから、年金の受給開始を70歳に繰り下げても、元を取れる可能性は十分にあります。

 

気になる点の二つ目が、仕事をリタイアしてから年金がもらえるまでの65歳から70歳の5年間のお金のやりくりをどうするのか。将来的には、定年延長や再雇用で70歳まで働ける環境になっているかもしれませんが、早くから老後資金として積み立てるなどして資金を用意する方が確実です。現在でも老後資金として貯蓄型の生命保険に加入している人も少なくありませんし、金融庁の言う通り積立型の投資信託という方法もあります(積立NISAやiDeCoなどの税制優遇もあります)。そうやって用意した老後資金を、生涯にわたって毎月○万円引き出すというように薄く長く使うのではなく、年金の代わりに65歳から70歳の生活資金に重点的に充てることで、70歳からの年金受給額が上がり、老後の家計に余裕が出る・・・というのが海老原さんのお話でした。

 

実際に支給される年金額も、老後に必要な生活費も個人差が大きく、老後資金をいくら用意しなければいけないかは一概に言えません。ただ、こういった視点も踏まえてライフプランを考えることで、人生で特に大きな出費となる三大資金「住宅資金」「教育資金」そして「老後資金」を、より楽で確実に確保できるようになります。ぜひ個別にライフプランを考えることをお勧めします。家計とマイホーム相談室では「マイホーム予算診断」としてライフプランの検討をお手伝いしますので、コチラからお気軽にお問い合わせ下さい。

 

 

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