住宅ローン フラット35は借りやすいってホント?

住宅ローンの中で知名度がダントツに高いのが【フラット35】。今週も、数件「フラット35っていいんですか?」とか「フラット35だと審査に通りやすいって聞いたのですが」とのご質問がありましたので、そんな点について書いてみます。

 

 

【フラット35】は住宅金融支援機構と民間の金融機関が提携して提供している、全期間固定金利タイプの住宅ローンのこと。もともと住宅金融公庫の公的融資の流れを汲んでいるので、通常の民間の金融機関の住宅ローンとは違う点がいくつかあります。固定金利タイプの住宅ローンは、借りる側からすると金利が確定しているので金利変動リスクがありませんが、逆に貸し手からすると将来金利の相場が上がった時に逆ザヤになるリスクがあるため、民間の金融機関は敬遠しがちで(全期間固定金利タイプの住宅ローンを扱っているのは全国展開しているメガバンクや信託銀行、ネットバンクが中心で、地銀・信金で扱っているところは少数派。民間の金融機関に行けば、たいがい変動金利タイプの住宅ローンを勧められるハズです)。そこで、債権化という手法を用い、民間金融機関が取り扱った【フラット35】の債権を住宅金融支援機構がまとめて買取ることで、民間の金融機関でも長期固定金利タイプの住宅ローンを扱えるようになるのです。多くの金融機関が取り扱っているので目にする機会も多く、知名度も高くなっています。

 

 

気になる一つ目は、金利などの条件でしょう。実はひとくちに【フラット35】と言っても、その仕組みが同じだけで、窓口となる金融機関によって金利や手数料などの条件が違います。ただ、金利については、ほぼ横並びで、手数料については金融機関によって差があります。この手数料は借入額の1~2%程度が多く、手数料が倍違ってきますから、よりよい条件で借りたいと思うなら「業界最低金利(と謳っているところがほとんど)」という言葉だけで選ばず、しっかり手数料がいくらか確認しましょう。

 

【フラット35】同士の金利にはあまり差が出ないとすれば、【フラット35】と民間の住宅ローンとで金利はどれくらい違うのか気になるでしょう。実は、この比較はあまり意味を成しません。民間の住宅ローンの主力は変動金利タイプで、多少長くても10年固定金利タイプがせいぜいのところ。変動金利タイプと固定金利タイプを比較すれば、金利自体は変動金利が低いにきまっています(ちなみに2020年3月時点の金利だと、変動金利で低いところは0.45%程度、【フラット35】は1.24%)。比較するなら、同じ固定金利タイプで比較すべきです。

 

そこで条件を揃え、民間金融機関の固定金利タイプと【フラット35】を比べると、【フラット35】はいい勝負をしています。例えばメガバンクの2020年3月の全期間固定金利は、みずほ銀行が0.99%、三菱UFJ銀行が1.56%、三井住友銀行が1.59%です。みずほ銀行が飛びぬけて良いように見えますが、【フラット35】は購入する住宅が一定の性能を満たしていれば5年~10年間の金利を0.25%引いてもらえる【フラット35S】の対象となります。そうすれば最長10年間はみずほ銀行と同水準になります。このように比較してみると、競合する銀行によっては【フラット35】よりいい銀行もあるので、そういう点では「【フラット35】の条件はいいの?」というご質問に対する答えは、『【フラット35】は悪く“は”ありません』という言い方が適切だと思います。

 

 

そこで次に気になる、「フラット35って審査が通りやすいのか?」という点について見てみます。

 

銀行が住宅ローンの審査を行う場合、いろいろな視点で審査を行います。【フラット35】が民間の金融機関と違う点は、建物に一定の基準が設けられている点。もともとの公的融資の流れから「一定の性能が満たされている住宅に対して融資を行う」という考え方があるからです。そういう点では、民間金融機関の審査よりも厳しいと言えます。

 

逆に、民間金融機関よりも審査が通りやすい項目があります。一つは健康状態。住宅ローンを借りる際には、借主に万一のこと(死亡・高度障害)があった場合に備えて団体信用生命保険(団信)に入る必要がありますが、持病があるとこの団信に入れず、住宅ローンを借りることができません。でも、【フラット35】は公的融資の流れを汲むため、民間金融機関の住宅ローンを借りられない人でも借りられるよう、団信を外して融資を受けることもできます(団信を外すと保険料が不要な分、金利も下がります。でも、だからと言って、健康な人が団信を外すようなことは避けたほうが良いです)。

 

また、審査にあたっては将来的にローンの返済が可能か(安定収入が見込めるか)を見るために、借りる人の勤続年収をチェックします。民間金融機関の場合、勤続年数は3年、短くても最低1年以上が必要ですが、【フラット35】の場合は1年未満でも審査の対象となります。現在の仕事での年収が確定していないくても、毎月の給与を12倍して、年収として見なしてくれるのです。

 

さらに、借り入れできる金額についても、民間金融機関よりも高く見てくれる傾向があります。ここまで見た「団信」と「勤続年数」「借入可能額」の点から、「【フラット35】は審査が通りやすい」というのは間違っていません。

 

ただ、民間の金融機関と変わらない点もあります。それは過去の金融取引の状況、「個人信用情報」の見方です。クレジットカードやカーローンなどの返済を延滞すると、個人信用情報に記録が残ってしまいます。特に、数度の返済の督促に応じず「異動(いわゆるブラック情報)」になるなど、個人信用情報の内容によっては「お金を貸しても、返済してくれない危険人物」と見なされ、住宅ローンの審査に通りません。過去に金融事故を起こして個人信用情報に記録が載っている人から「フラット35だと審査に通りやすいと聞いたけど、どうですか?」と訊かれることがあるのですが、残念ながら個人信用情報については【フラット35】が通りやすいということはありません

 

まとめると、【フラット35】は建物に対する審査が厳しいものの、健康状態や勤続年数、借入可能額については民間金融機関よりも審査は緩く、個人信用情報については民間金融機関と大差ない、ということになります。住宅や不動産業者の中には、「銀行で住宅ローンの審査が通らなければ、最後は【フラット35】で通せばいい」と言う人もいますが、そんな簡単なものではありません。そもそも銀行が住宅ローンの審査を通さないというのは、それ相応の理由があるのです。それを押してまで住宅ローンを借りても良いのかをしっかり考える必要があるでしょう。

 

あと、ここで解説した内容はあくまで一般的な内容です。住宅ローンは各金融機関によって審査基準が違うほか、借りる人の個別要素も大きいため、銀行にご相談、もしくは住宅ローンの申し込みをしないと確かなことは言えない点、ご理解下さい。

 

 

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