家計とマイホーム相談室では、家づくりにあたって「いくらまで家づくりにお金をかけてよいの?」という疑問に答えるために、これから40年にわたる家計のシミュレーションをもとにキャッシュフロー表を作成する「マイホーム予算診断」をご提出しています。最近、このマイホーム予算診断のご依頼がとても増えているのですが、それと同時に「ハウスメーカーから紹介されたファイナンシャルプランナー(FP)に資金相談をしたら、いつのまにか生命保険に入ってしまっていた」というケースが何件も重なっています。以前からこういうご相談者は一定数いらっしゃったのですが、最近なぜか「ハウスメーカー紹介のFPには○○万円の予算でよいと言われたけれど、中立な専門家に改めて教えて欲しい」というご相談が増えています。
こういったご相談の中には「新しい保険には入る必要がなかったように思う」とか、さらには「新しく入った生命保険の内容を改めて見直してみたら、元入っていた保険よりも条件が悪くなっているように思える」といったお声も聞こえる始末。草野が見直してみると、確かにそこまで保険に入る必要は無さそうというケースが多々見受けられます。こんなことでは、相談したFPは「ファイナンシャルプランナーという肩書を使って、自分の保険を売りたいだけの保険営業マン」と言われてもしょうがないでしょう。
中には、家を売りたいハウスメーカーの営業マンと、保険を売りたい生命保険の営業マンが一緒になると、「〇〇万円の家が買えるように、シミュレーションをいじってよ」と口裏を合わせられて、家計に過度な負担のかかる予算を提示されることさえ起こりかねません(「類は友を呼ぶ」という言葉もあります)。全てのFPや生命保険の営業マンがこのような人たちという訳ではありませんが、残念ながらFPというより商品を売りたい単なる営業マンと呼べてしまうFPも一定数存在します。そこで、相談したり紹介されたりしたFPが、単なる生命保険の営業マンなのか、それとも一定の住宅に関する知識を持ち合わせ、相談者の立場でアドバイスしてくれるか見分けるチェックポイントと対処法をご紹介します。
◆目次◆
1.何を収益源にしているか?
2.住宅・不動産業界の経験の有無
3.自分で家を購入しているか?
4.住宅・不動産取得の知識の有無
5.住宅・不動産取得の知識を問う質問集
6.住宅・不動産に詳しくない保険営業マンにあった時の対処法
1.何を収益源にしているか?
一般的に生命保険会社の営業マンや生命保険の代理店の営業マンは、生命保険の販売手数料を収益源にしています。これは名刺を見れば所属している会社や業務内容が書いてあるので、分かりやすいです。保険の販売を収益源にしていれば、無料で相談に乗ってもらっても最終的には生命保険の案内(営業)をされる可能性は高くなります。
中には生命保険の販売をしていないFPもいるかもしれませんが、その場合、収益源は何なのかを確認しましょう。例えば住宅ローンや証券の販売を収益にしている場合は、それらの商品を勧めてくる可能性があります。
2.住宅・不動産業界の経験の有無
生命保険と住宅・不動産は全く別の業界ですが、ハウスメーカーの営業出身の保険営業マンは意外と少なくありません。人生に関わる大きな商品を販売するという共通点があるので、違和感なく転職できるのかもしれません。
やはり、住宅・不動産業界の経験がある方が、住宅ローンや税制優遇などの知識を持っているケースが多く、その場合、プロとしてのアドバイスが期待できる可能性があります。
3.自分で家を購入しているか?
住宅・不動産業界の経験が無くても、保険営業マン自身がマイホームを購入し、家づくりに関する経験や知識を持っているケースもあります。その場合、家を購入した先輩施主としてのアドバイスは、施主の本音としてとても参考になり得ます。ただ、家づくりというのは個別差が大きいので、その営業マンのケースを絶対視するようなら、話半分に聞いた方が無難です(中にはその保険営業マンが、紹介してくれたハウスメーカーで家を建てているケースさえあります)。
4.住宅・不動産取得の知識の有無
生命保険を販売しようが、住宅・不動産業界の経験を持っていなかろうが、自分でマイホームを購入していなかろうが、住宅や不動産取得に関する知識があれば、FPとしてはアドバイス出来ます。ただ、FPとしての知識や経験は、一般の人では見極めが難しいでしょう。そこで、知識を見極めるためにこんな質問をいくつかしてみると良いでしょう。
5.住宅・不動産取得の知識を問う質問集
Q.1「家づくりをする人の相談を、何件くらい(もしくは、何年くらい)受けていますか?」
※その保険営業マンの経験を聞いています。
Q.2「住宅ローンの金利タイプの種類と違いを教えて下さい」
※変動・固定・期間固定の3種類の違いです。変動金利タイプの「5年ルール」や「1.25倍ルール」あたりをしっかり聞いてみて下さい
Q.3「土地を購入して注文住宅を建てる場合の住宅ローンの手続きはどんな流れになりますか?」
※土地契約時の審査の流れと、建物中間金の支払いがポイントです
Q.4「夫婦二人で住宅ローンを組む場合、団信の扱いはどうなりますか?」
※銀行によって、組む住宅ローンによって団信の扱いが異なります。
Q.5「わたしはどれくらいの住宅ローン減税を受けられますか?」
(年収を保険営業マンに言いたくない人は「住宅ローン減税の仕組みを教えて下さい」)
Q.6「住宅取得資金の贈与税非課税の特例って、どのような制度ですか?」
※5・6は、住宅の資金相談を受けるなら、当然知っておくべき内容です。これに答えられないようなら、その保険営業マンに相談しても実のあるものにならない可能性があります。
6.住宅・不動産に詳しくない保険営業マンにあった時の対処法
上記をチェックした結果、その保険営業マンが住宅・不動産取得に詳しく無さそうだと分かった時、どうすればよいのでしょうか? おそらく、住宅の話しはそこそこに、ライフプランの話しから保険の必要性、そして保険商品の説明に話が移っていくことと思います。
商品を勧められるからといって、「自分は保険は不要なので、住宅資金の話しだけして欲しい」というのは、相手に対して少々失礼な話。無料で相談に乗ってくれた感謝の気持ちで、話を聞いて下さい。「保険の話もしてくるな」と心づもりの上で話を聞けば冷静に判断できます。本当にその生命保険が必要だと思えれば保険への加入を検討しても良いでしょうが、すでに十分に検討して生命保険に入っているようなら、「無料でアドバイス頂いてありがとう」とお礼を言ってやんわりとお断りして問題ありません。万一、断りを入れてもごり押ししてくる保険営業マンだったら、そんな人を紹介するハウスメーカーの営業マンともども、縁を切れば良いのです。
プロの立場から率直なことを申し上げると、住宅や不動産のスキルが無いのにそのアドバイスをするという建前でご相談者と話をしている時点でそのFPの姿勢に疑問符が付きますので、そのような生命保険営業マンの話を聞く必要性も低いかな?と思います。
◆最後に◆
あくまで上記チェックポイントは目安なので、一つや二つに該当するからと言ってその生命保険の営業マンがダメと言う訳ではありません。ただ、数多く該当するようなら、不必要な生命保険に加入させられた上に、家計の許容できる以上の家を購入してしまい、最悪の場合、家計が耐えられなくなってしまう事態さえ起こり得ます。君子危うきに近寄らず、という言葉もありますので、早めに関係を見切った方がよいかもしれません。
なお、以前当コラムに「いろいろいる ファイナンシャルプランナーの選び方」という記事も掲載していますので、合わせてご覧下さい。
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マイホーム購入前に、中立な第三者にご相談を!
名古屋駅前の住宅専門ファイナンシャルプランナー
家計とマイホーム相談室 草野芳史
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