時々いただく質問に「新型コロナウイルスの影響で、これから土地の値段は下がりますか？」というものがあります。現実には、感染がなかなか収束しません。とはいえ、一時期の外出自粛時期に比べれば、GO TOキャンペーンなど経済活動が徐々に再開されており、家づくりをお考えの方も再び動き出していて、草野自身も緊急事態宣言が解除された5月中旬以降、お問合せ件数が増えています。
ただ、短期的には不動産を取り巻く環境は決して良いとは言えず、特に、不景気による店舗の閉店や収入ダウンで賃貸のテナントや入居者が退去したり、退去しなくても家賃の減額交渉をされたという大家さんもいます。ただ、これらは事業用不動産ですので、居住用の住宅とは趣が違うようにも思います。・・・と感覚的なお話しではなく、現実のデータとしてはちょうど昨日9月29日に2020年の基準地価が各都道府県と国土交通省から発表されましたので、見てみたいと思います。
◆目次◆
０．基準地価とは
１．2020年基準地価の全国的傾向
２．東海3県の基準地価 愛知県
３．東海3県の基準地価 岐阜県
４．東海3県の基準地価 三重県
０．基準地価とは
基準地価とは、公示価格、路線価（相続税評価額）、固定資産税評価と4つある公的な土地評価の一つで、毎年7月1日時点の土地の評価を都道府県がまとめたものです。1月1日時点の土地の評価を出す公示価格を補完し、土地取引や公共事業における土地収用時の参考にされます。
１．2020年基準地価の全国的傾向
なんと言っても新型コロナウイルスの感染拡大による不況で、全用途の全国平均が3年ぶりの下落になる等、全国的に地価が下落しています。住宅地をみると全国では前年の▲0.1％から下落率が下がる▲0.7％で、プラスになっているのは宮城県（0.1％）、東京都（0.2％）、福岡県（0.8％）、大分県（0.1％）、沖縄県（4.0％）と、2019年の14から4都道府県へと減っています。
２．東海3県の基準地価 愛知県
東海3県でも全国同様下落傾向があり、これまでプラスを維持していた愛知県でも商業地が前年の＋3.7％から一転▲1.1％と8年ぶりの下落、住宅地も前年の＋0.9％から▲0.7％の下落となりました。ただ、名古屋市の中村区・中区・東区といった都心部や刈谷駅前などでは上昇するなど、立地によって二極化の傾向が顕著になっています。
３．東海3県の基準地価 岐阜県
岐阜県も全国同様下落傾向が強まり、商業地が前年の▲0.9％から▲2.2％、住宅地が前年の▲1.4％から▲2.0％と28年下落幅が拡大しています。しかも下落は28年連続で、全国で一番下げ幅も大きくなっています。
４．東海3県の基準地価 三重県
三重県も同様で、商業地が前年の▲0.9％から▲1.3％、住宅地が前年の▲1.5％から▲1.6％と下落、下落幅も4年ぶりに拡大しています。
５．今後の地価の予想
以上ご覧いただいた通り、基準地価が下がっているというのは、予想通りと言えます。また、不況で地価の下落率は上がっているものの、都心など利便性の高い地域では決して地価は下がっていません。名古屋市内で言うと、名駅などの都心や千種区・昭和区・瑞穂区・名東区といった人気エリアでは、需要の方が大きいので、地価はあまり下がらないでしょう。以前から少子高齢化により地価の下落と二極化は見られていましたので、そういう点では、新型コロナウイルスの影響もあるとはいえ、大局的に見ればこれまで通りの流れと言えます。
ただ、個人的には今回の新型コロナウイルスによるテレワークの普及等による仕事や生活スタイルの変化などで、これまでのような都市と田舎といった二極化に変化が出るように思います。わざわざ都心に通勤しなくてよくなり、買い物もすでにネット通販が普及しているだけでなくドローンなどの新技術も普及し、移動手段を見ても自動車の自動運転が実用化しつつあります。これらの動きから、利便性の高い都心や駅徒歩圏の価値が下がることは無いものの、郊外や田舎の環境が見直される可能性が出てきました。ただ、田舎全ての地価が上がるということでは、当然ありません。技術の進歩に合わせて、ここ2～3年で大きく土地に対する価値観が変わるかもしれません。それが地価動向にどのように表れるか興味深いところです。
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名古屋駅前の住宅専門ファイナンシャルプランナー
家計とマイホーム相談室 草野芳史
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