9月に入って、以前の当ブログでも紹介した通り、来年度予算に向けた国の動きが少しずつ見えてきました。9月2日付の日本経済新聞朝刊でも、「築古戸建ての流通促進」というテーマで国の方針が紹介されています。
国土交通省の不動産価格指数によると、マンションは2010年を100とした場合、直近で216を超えているのに対し、戸建ては117程度。つまりマンションの値上がりが突出しており、「新築マンションは高すぎて手が届かない」という声が広がっています。また、不動産業界の調査(2022年)によると
- 「中古に抵抗がない」13.7%
- 「きれいなら抵抗なし」35.8%
- 「価格と状態で判断」32.3%
つまり、過半数の人が「状態が良ければ中古も選びたい」と考えています。
こうした背景から、「築古でも良質な戸建て」を流通させることで、暮らしやすい住まいの選択肢を広げようという狙いがあります。今回の当ブログでは、日経新聞の記事や国土交通省が公表した資料などをもとに、速報版として概要を整理してみます。
国が検討中のモデル事業とは?
国土交通省の概算要求資料によると、国は2026年度から、中古戸建ての価値を正しく評価するためのモデル事業を検討中です。古い住宅でも維持管理やリフォームの実績があれば、それを売却価格に反映できるようにする仕組みを目指しています。要点を整理すると下記となります。
- 2026年度から新しい事業の実施を予定(※ただし現時点では検討段階)
- 概算要求ベースで関連経費3億7400万円を計上
- 次期「住生活基本計画」に、中古住宅の性能・利用価値を評価しやすい仕組みを盛り込む方向性
耐震補強・断熱改修をきちんと評価
古い木造住宅は「築20~25年で価値ゼロ」と言われがちですが、実際には補強や改修で住みやすさを保てます。今回の検討中のモデル事業では、日経新聞報道によれば
- 耐震補強
- 外壁・窓の断熱改修
- 雨漏り対策・シロアリ予防
といった工事を査定でプラスに評価する方向性が示されています。
住宅履歴情報の活用
国交省資料では「住宅履歴情報(住宅のカルテのようなもの)」の活用も検討に含まれています。
- 定期点検の記録
- 設備更新やリフォーム履歴
こうしたデータを残しておくことで、売却時に「安心できる物件」として買い手に伝わりやすくなるわけです。
ただし、どこまで査定に反映されるかはまだ不確定で、今後の制度設計次第となっています。
民間の仕組みも参考に
大手ハウスメーカーの「スムストック」では、構造躯体を50年で評価し、リフォーム履歴を査定に反映する仕組みが導入されています。日経新聞によれば、国交省もこうした民間の事例を参考に検討している段階とされています。
中古マンションは多くが鉄筋コンクリート造(RC造)で、管理組合が主体となって大規模修繕を定期的に実施するため、性能や維持管理の状況が比較的分かりやすいのが特徴です。これに対し戸建て住宅は、木造・鉄骨造・RC造など構造や工法がバラバラで、メンテナンスも所有者の判断に委ねられているため、手入れの差が大きく出てしまいます。
つまり、築古戸建てが中古市場で「状態が見えにくい」「価値が評価されにくい」とされてきた背景には、このような事情があるのです。今回のモデル事業が狙うのは、まさにこのギャップを埋め、戸建てもマンション同様に「メンテナンス履歴が正しく評価される市場」を整えていくことだといえるでしょう。
今後のスケジュール(想定)
現時点では概算要求の段階であり、モデル事業の詳細は未定です。例年の流れを踏まえると、
- 2025年夏~秋:各省庁の概算要求
- 2025年12月:政府・与党の「税制改正大綱」で方向性が示される
- 2026年1月~2月:国会で正式決定
- 2026年度から新しいモデル事業がスタート
※ただし、予算成立の過程や制度設計の詳細によって変わる可能性があります。
まとめ
- 背景は「新築価格の高騰」と「中古需要の高まり」
- 国は2026年度から、中古戸建てを対象とした新しいモデル事業を検討中
- 耐震補強や断熱改修、点検履歴などを査定に反映する方向
- 制度の詳細や名称は未定で、今後の予算化・設計を待つ必要あり
今回の記事は速報版として概要を整理しました。今後、制度の内容が固まってきたら、改めて分かりやすく最新情報をお伝えしていきますね。
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家計とマイホーム相談室 草野芳史
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