住宅ローン 【2025年12月】三菱UFJが変動金利を利上げ! 住宅ローンの転換点を読む

本日から12月。師走ということで世間は年末に向けてバタバタしてきますが、金融市場は一足先の先月から「円安・債券安(長期金利上昇)・株価乱高下」と慌ただしい動きを見せています。その影響を受け、12月の住宅ローン金利は固定金利タイプを中心に大きく上昇。一方、変動金利タイプは横ばいが続くものの、三菱UFJ銀行の利上げが“本格的な上昇の前触れ”を示す形になりました。この記事では、住宅ローンの最新の金利動向と今後の見通しを分かりやすく解説します。

 


1.2025年12月の住宅ローン概況


2025年12月の住宅ローン金利は、はっきりとした潮目の変化が見られます。

  • 固定金利タイプ・固定金利期間選択タイプは0.05〜0.20%の大幅利上げ
    (背景に、長期金利1.8%台への高騰)
  • フラット35は1.97%と2.0%目前(約2年ぶりの高水準)
  • 変動金利は横ばいが続くが、三菱UFJ銀行が0.595%→0.670%へ利上げ
    → 優遇幅縮小=政策金利の引き上げを先取りした動きか
  • 日銀の年内利上げの可能性が高まり、変動金利の上昇は“カウントダウン”
    → 2026年春にかけて、住宅ローンは波乱含みの展開が予想される

つまり今は、「脱低金利時代」へ本格的に移行する、転換点の真っただ中と言えます。

 


2.変動金利タイプの2025年12月の動向


◎ ほとんどの金融機関は据え置き
2025年12月時点、主要行・地銀・ネット銀行の多くは変動金利タイプを据え置いています。背景は明確で、日銀が政策金利(0.50%)を据え置いているためです。

 

◎ しかし今月最大のニュースは「三菱UFJ銀行の利上げ」

  • 0.595% → 0.670%(+0.075%)
  • 店頭金利(2.875%)は据え置き
  • = 優遇幅を縮小した=先取り利上げ

これは、変動金利の世界では非常に大きな意味を持ちます。

変動金利は、政策金利が動いた2〜3ヶ月後に上がる
(=メガバンクがそれを先取りして動き始めた)

実際、金融市場はすでに「年内の日銀利上げ」を織り込み始めており、長らく業界最低水準を維持してきた三菱UFJ銀行の利上げは、その“合図”としての性質が強いと言えます。

 

◎ 草野の肌感覚:変動金利の利上げは「静かに始まっている」
今は横ばいに見えますが、実務の現場では確実に空気が変わってきています。

  • 土地を探している間に金利が上がってしまった相談者が増えている
  • 金利が0.1〜0.2%上がるだけで、総返済額は数十万〜百万円単位で変わる
  • 「あと少し待つか」の判断が、将来の負担差につながっている

つまり、変動金利は“年明け〜来春の利上げ”が非常に濃厚な状況です。

 


3.固定金利期間選択タイプ(10年固定など)の2025年12月の動向


◎ 各行が一斉に0.05〜0.20%の大幅利上げ
メガバンク、ネット銀行、地銀・信金まで、ほぼ全ての金融機関で固定金利期間選択タイプが大幅利上げしました。理由はただ一つ、下記となります。

 

◎ 長期金利(10年国債利回り)が「1.8%台」へ上昇
(出典:日本経済新聞 マーケット金利チャート)

  • 日本国債が売られて金利が上昇(=債券安)
  • 背景:円安・日銀の利上げ観測・世界的な債券売り

長期固定の金利は、この長期金利の動きに連動するため、固定金利の上昇は“市場を映した姿そのもの”と言えます。

 

◎ FPとしての見解:固定金利は「高止まりフェーズ」に入りつつある

  • これ以上の急騰は一服する可能性がある
  • しかし1.3〜1.6%の時代は終わり、“2%前後”が新しい基準になるか

 

変動金利タイプに先んじて、2019年を底として上がり始めた固定金利タイプは、いよいよフラット35も2%時代になる可能性が高まりました。

 


4.全期間固定金利タイプの2025年12月の動向


◎ 民間の全期間固定は「2%台後半~3%台」に乗る金融機関が増加
12月は、多くの民間金融機関で全期間固定金利タイプが0.1~0.2%前後の利上げとなりました。結果として、

  • 2.7%~3.0%前後

といった水準が珍しくなくなり、「全期間固定=2%を大きく超える時代」に入ったと言えます。

 

◎ 背景は長期金利(10年国債利回り)の高止まり

  • 長期金利は1.80%台(※2025年11月末時点)
  • 日銀の利上げ観測、円安による輸入物価高
  • 世界的な債券売り(米国債利回りも高止まり)

民間の全期間固定はこの長期金利の影響を最も強く受けるため、金利の上昇圧力がもっとも直結しやすいタイプです。

 

◎ FPとしての見解:固定は“安さよりも安定性を買う”時代へ
ここ数年間の「歴史的低金利」では、固定金利でも1%台前半という時期がありました。しかし、今はもうその状況ではありません。

全期間固定は、金利が安いから選ぶ時代から、「家計を守る保険として選ぶ時代」に入ったと感じています。固定金利の安心感は確かに強いものの、コストの上昇は、返済計画の再検討を迫る要素となっています。

 


5.フラット35(全期間固定)の2025年12月の動向


◎ 12月のフラット35は1.97%(返済期間20年超)
先月1.90%から+0.07%の利上げとなり、ついに2%目前。これは約2年ぶりの水準です。

  • 長期金利上昇の影響がそのまま反映
  • “2.0%台時代”が目前に迫る

 

◎ 一方で「優遇制度」での割安感はむしろ強まっている

  • フラット35S
  • 子育てプラス

などを併用すると、当初5年間は0.97%など、民間の固定金利よりも大幅に低い水準になります。

 

◎ FPとしての見解:優遇制度の活用は“金利が上がる時代”ほど効果が大きい
固定金利の上昇局面では、制度優遇による“金利圧縮効果”が家計に効くため、フラット35の相対的な魅力はむしろ高まっています。

  • 金利の天井が固定される
  • 優遇で当初負担が大きく抑えられる
  • 返済計画が安定する

「金利が上がる時代こそ、優遇制度の活用が家計を左右する可能性を持つ」と言えます。

 


6.長期金利とマーケット(円安・債券安・株価乱高下)


◎ マーケットの3大テーマ
2025年11月~12月にかけて、市場では次の3つが同時進行しています。

  1. 円安(150円前後)
  2. 債券安(長期金利上昇) → 10年国債が1.8%台
  3. 株価乱高下(高値圏だが不安定)

この「円安・債券安・株価乱高下」が、今月の固定金利上昇の“すべての背景”と言える状況です。

 

◎ 日銀の利上げ観測が市場を揺らしている

  • 円安を止めるには利上げが必要
  • 物価高への対応
  • 2026年春の賃上げ見通し

こうした要因から、12月の日銀会合は「利上げの有力候補」と見られています。

 


7.日米金融政策の動き(FRB/日銀)


◎ 米国(FRB)は「利下げに転じた」が慎重
10月末に0.25%の利下げを実施。ただしパウエル議長は、

  • 「次の利下げは確定ではない」
  • 「慎重な姿勢を維持」

と警告しており、世界的な金利低下が一気に進む状況ではありません。

 

◎ 日本(日銀)は「年内利上げの可能性が高まる」
10月の日銀会合では政策金利は据え置きでしたが、複数の委員が「0.75%へ利上げすべき」と発言。マーケットも“12月の利上げ”をかなり織り込み済みの状態です。

 


8.ファイナンシャル・プランナーとしての所感


① 「脱低金利時代」へ本格的に移行した

  • 変動金利が1%台へ近づく
  • フラット35が2%目前
  • 民間全期間固定は2.8〜3.0%台

10年近く続いた「超低金利の常識」が、2025年末でほぼ終わりを迎えようとしています。

 

② 実際の相談でも“金利上昇の影響”が増えている
最近増えているのが、土地を探している間に金利が上がってしまうケースです。たとえば……

  • 建築条件付き土地で検討していたが、迷っている間に固定金利が0.1%上昇
  • その結果、総返済額で数十万円以上の差が発生
  • 予算オーバーを理由に別の物件を探すメリットが薄れた

こうした「現場の痛み」は、数字以上のインパクトがあります。

 

③ 「多少予算オーバーでも、早く決断した方が家計にプラス」のケースも
草野としては安易に背中を押すことはしませんが、最近の金利動向を踏まえると、

  • これからの利上げ基調はほぼ確実
  • 利息だけで数十万円~百万円以上の差
  • 当面、2026年春まで金利上昇イベントが続く

という状況で、“迷っている時間が家計のマイナスに転じてしまう”ケースが確実に増えています。

 

④ 2026年は“波乱の春”になる可能性

  • 12月の日銀会合で利上げ → 年明け~春の変動金利上昇
  • 長期金利の乱高下
  • 日米金利差の変動
  • 賃上げの強弱によって市場が揺れやすい

2026年春は、住宅ローン金利にとって大きなターニングポイントになり得ると考えています。

 


9.名古屋・東海エリアの特徴


◎ 名古屋圏は「金利上昇の影響を受けやすい地域」
理由は3つあります。

  1. 車社会で生活費が高くなりがち
  2. 土地価格の高止まりが続いている
  3. 建築費が他地域よりも下がりにくい

そのため、返済負担率を低く抑える=金利上昇の影響を受けにくくすることが非常に重要です。

 

◎ 金利選択も“東海エリア向けの戦略”が必要
変動金利と固定金利の「ミックスローン」など、地域事情に合わせた組み方が、長期的な家計安定につながります。

 


10.よくある質問(FAQ)


Q1:変動金利はいつ上がる可能性が高いですか?
変動金利は、政策金利が引き上げられた後、2〜3カ月遅れで上昇するのが一般的です。マーケットは「12月の日銀会合での利上げ」を織り込み始めており、仮にその見通し通りになれば、2026年1月〜3月ごろに変動金利が上がる可能性があります。

 

Q2:フラット35は2.0%を超えるのでしょうか?
12月のフラット35は1.97%。長期金利が1.9〜2.1%に乗ると、フラット35は2.0%超えが十分あり得る水準です。ただし、「フラット35S」「子育てプラス」が使えると、金利が当初5〜10年程度、最大1%下がるため、実質負担はかなり抑えられます。

 

Q3:固定金利はさらに上がりますか?
上昇基調は続いていますが、12月の利上げが一服すれば、短期的には落ち着く可能性もあります。ただし、以下の材料が揃うと、再び上がりやすい状況です。

  • 日銀が追加利上げに踏み切った場合
  • 円安が続き輸入物価が上昇した場合
  • 米国の利下げペースが鈍化した場合

固定金利は“上がりやすい地合い”が残っていると見るのが現実的です。

 

Q4:今は家を買うべき? それとも待つべき?
金利・土地価格・建築費の三拍子が上昇傾向のため、「待てば得」になりにくい相場です。特に、

  • 土地探しに時間がかかっている
  • 2026年に入居したい
  • 子育てプラスなどの優遇を使いたい
  • みらいエコ住宅2026などの補助制度を使いたい

という方は、“決断を先送りするほど金利上昇分の負担が増える”ケースが増えると言えるでしょう。

 

Q5:名古屋・東海エリアで特に注意することは?

  • 車の維持費など生活コストが高くなりやすい
  • 建築費が他地域より下がりづらい
  • 土地価格も人気エリアで高止まり

そのため、返済計画に余裕を持たせることが最重要です。ミックスローンやフラット35Sなど、“地域特性に合わせた金利選び”が家計を守ります。

 


11.まとめ:年末~2026年春は「住宅ローン金利の転換点」


最後に、今月のポイントを3つに整理します。

① 固定金利は大幅上昇、変動金利は利上げカウントダウン

  • 固定金利期間選択タイプ・全期間固定は一斉に利上げ
  • フラット35は1.97%と2%目前
  • 変動金利は横ばいだが、三菱UFJの利上げは“先取りのサイン”

 

② 「脱低金利時代」への移行が加速

  • 変動金利1.0%台へカウントダウンか
  • フラット35は2%目前
  • 民間金融機関の全期間固定は2.8〜3.0%台

→ 超低金利の常識は、完全に過去のものへ。

 

③ 迷う期間が長いほど“負担が増える”ケースが増加中

  • 土地探し中に金利が上がってしまう相談者が増えている
  • 0.1〜0.2%の利上げでも、総返済額は数十万〜百万円単位の差
  • 2026年にかけて、金利イベントが連続

→ 早めの検討・早めの決断が家計を守ることにつながります。

 

住宅ローンは、“借りるタイミング・金利の選び方・家計バランス”の3つが揃って初めて、きれいに設計できます。

  • 「変動と固定、どちらにすべき?」
  • 「いま買うべきか、少し待つべきか?」
  • 「返済負担を抑える最適な組み方は?」

といった悩みがあれば、家計とマイホーム相談室までお気軽にご相談ください。一緒に“家計を守る住宅ローン設計”をつくっていきましょう。

 

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家計とマイホーム相談室 草野芳史

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