「家賃を払い続けるのはもったいない」「でも、住宅ローンを何十年も返済するのは不安……」。持ち家と賃貸、どちらがよいのか迷う方は少なくありません。住宅価格や金利が上昇するなか、住まいの選択は家計にも大きく影響します。そこで今回は、お金だけでなく、暮らし方や将来のライフプランも踏まえ、持ち家と賃貸の選び方を考えてみます。
1.今回の記事のポイント
- 持ち家と賃貸、どちらがおトクかは条件次第。 住宅価格や家賃、金利、修繕費などによって経済的な損得は変わります。
- 住宅ローン返済額と家賃だけでは比較できません。 税金や維持管理費、住み替え費用なども含め、長期的に考えることが大切です。
- 持ち家は自由度と資産形成、賃貸は身軽さと柔軟性が魅力。 どちらにもメリット・デメリットがあります。
- 暮らし方や価値観によって、住まい方の向き・不向きが変わります。 仕事や家族構成、住まいへのこだわりなども重要な判断材料です。
- 「どちらを選ぶか」だけでなく「いつ購入するか」も重要。 将来のライフプランと家計を踏まえて考えましょう。
2.持ち家と賃貸、結局どちらがおトク?
「家賃は捨て金だから、住宅ローンを借りて家を買った方がおトク」「持ち家は維持費がかかるから、賃貸の方が気楽でよい」。こうした意見を耳にしたことはありませんか?
たしかに、持ち家なら住宅ローンを完済した後も土地や建物が残ります。一方、賃貸なら多額の住宅ローンを抱えずに済み、仕事や家族構成の変化に合わせて住み替えやすいというメリットがあります。
しかし、持ち家と賃貸のどちらが経済的に有利なのか、すべての人に共通する答えはありません。 住宅価格や家賃、住宅ローン金利、将来の修繕費などによって結果は変わりますし、そもそも住まいに何を求めるかも人それぞれです。そこでまずは、持ち家と賃貸にかかるお金の違いから見てみましょう。
3.持ち家と賃貸、かかる費用はどう違う?
持ち家と賃貸の経済的な損得を考える際、よく比較されるのが「毎月の住宅ローン返済額」と「家賃」です。例えば、現在の家賃が月10万円なら、住宅ローンの返済も月10万円程度に抑えれば、家計への負担は変わらないように思えるかもしれません。しかし、実際にはそれほど単純ではありません。
■ 持ち家は住宅ローン以外にもお金がかかる
持ち家の場合、購入時には頭金に加え、住宅ローンの事務手数料や登記費用、税金などの諸費用が必要です。さらに、購入後も住宅ローン返済だけでなく、固定資産税や火災・地震保険、建物のメンテナンス費用などがかかります。分譲マンションなら、管理費や修繕積立金、駐車場代なども考慮しなければいけません。
特に見落としやすいのが、将来の修繕・リフォーム費用です。給湯器やエアコンなどの設備交換、屋根や外壁の補修、水回りの改修など、築年数が経過するにつれてまとまった出費が発生することもあります。また、住宅ローンを完済しても、固定資産税や建物の維持管理費用はなくなりません。
■ 賃貸は家賃を払い続ける必要がある
一方、賃貸住宅では、入居時に敷金や礼金、仲介手数料などがかかるものの、持ち家に比べて初期費用を抑えやすいという特徴があります。建物本体の修繕も、借主に責任がある場合などを除き、原則として貸主が負担するため、屋根や外壁の大規模修繕に多額の費用がかかる心配は通常ありません。
ただし、毎月の家賃は住み続ける限り発生しますし、契約によっては更新料も必要です。住み替えれば引越し費用や新たな入居費用がかかり、将来の家賃上昇も考慮する必要があります。
つまり、持ち家と賃貸では、かかる費用の種類だけでなく、お金が必要になる時期も違うのです。
4.50年間の住居費を比較してみると?
では、長期間で比較すると、持ち家と賃貸ではどれくらいの違いが出るのでしょうか。今回、愛知県刈谷市周辺を想定し、30歳の夫婦が80歳になるまでの50年間について、「新築注文住宅」「中古戸建」「賃貸住宅」の3つのケースで住居費を試算してみました。
住宅ローンの元利返済額や家賃のほか、税金、保険料、修繕・リフォーム費用、賃貸住宅の更新・住み替え費用なども含めて比較しています。その結果、今回設定した条件では、50年間の総支払額は中古戸建が最も少なく、次いで賃貸住宅、新築注文住宅という順番になりました。
ただし、これは2026年10月時点で設定した一定の条件に基づくシミュレーションであり、中古住宅が必ず最もおトクという意味ではありません。住宅価格や金利、家賃、将来の修繕費などが変われば、結果も大きく変わります。また、持ち家の場合は50年後にも土地や建物が資産として残る可能性がありますが、その価値がいくらになるかも分かりません。
さらに、今回比較した住宅は広さや築年数、住宅性能なども異なります。支払う金額が少なくても、得られる住環境や満足度まで同じとは限らないのです。住居費を長期的に比較することは大切ですが、金額だけで持ち家と賃貸の優劣を決めることはできないでしょう。
5.持ち家と賃貸、それぞれのメリット・デメリット
お金の面以外にも、持ち家と賃貸にはさまざまな違いがあります。
■ 持ち家は自由度と安心感が魅力
持ち家の大きなメリットは、自分たちの希望に合った住まいを実現しやすいことです。注文住宅なら間取りや設備、断熱性・耐震性などを希望に合わせて選べますし、庭でガーデニングやバーベキューを楽しんだり、将来の生活に合わせてリフォームしたりすることもできます。
また、住宅ローンを完済すれば毎月の返済負担がなくなり、老後の住まいを確保しやすいという安心感もあります。住宅ローンに団体信用生命保険が付いていれば、借入者が死亡するなど所定の条件に該当した場合、住宅ローン残高が保障されることもメリットです。
一方、長期間の住宅ローン返済に加え、建物の維持管理や災害への備えも自分たちで考える必要があります。転勤や転職、家族構成の変化などによって住み替えたくなっても、売却に時間がかかったり、売却価格が住宅ローン残高を下回ったりする可能性があります。
■ 賃貸は身軽さと柔軟性が魅力
賃貸住宅の大きなメリットは、ライフスタイルの変化に対応しやすいことです。転勤や転職、子どもの誕生・独立などに合わせて、住む場所や住宅の広さを比較的柔軟に変えられます。また、多額の住宅ローンを抱えず、建物の大規模修繕などを自分で手配する必要も原則としてありません。住まいよりも旅行や趣味、教育費などにお金を使いたい方には魅力的な選択肢でしょう。
一方で、間取りや設備を自由に変更しにくく、家賃の支払いが続きます。高齢になると、収入や保証人などの事情から、新たな賃貸住宅への入居が難しくなる場合もあります。
このように、持ち家にも賃貸にもメリットとデメリットがあり、どちらが優れていると一概には言えません。
6.あなたは持ち家向き? 賃貸向き?
では、どのような人が持ち家に向いていて、どのような人が賃貸に向いているのでしょうか。私は、住まい選びではお金の問題と同じくらい、自分たちの暮らし方や価値観を整理することが大切だと考えています。
例えば、次のような点について考えてみてください。
- これからどこで暮らしたい? ひとつの地域に腰を据えたいのか、将来は転勤や移住の可能性があるのか。
- これから家族構成はどう変わりそう? 子どもの人数や親との同居、実家の承継など、将来の生活に変化がありそうか。
- 住まいにどこまでこだわりたい? 間取りや住宅性能、庭、インテリアなど、自分たちらしい住まいを実現したいか。
- お金を何に使いたい? 住まいの快適さを優先したいのか、趣味や旅行、将来の貯蓄などに余裕を持たせたいのか。
- 住まいの維持管理をどう考える? 自分たちで手入れをしながら長く住み続けたいか、それとも管理の負担をできるだけ減らしたいか。
一般的には、将来の暮らし方がある程度定まっており、住まいにこだわりたい方は持ち家に向いているでしょう。逆に、仕事や家族構成などが変わる可能性が高く、住み替えの自由度を重視する方は賃貸に向いていると考えられます。もっとも、これはあくまで一般的な傾向です。持ち家でも将来売却して住み替えることはできますし、賃貸でも長く同じ場所に暮らすことはできます。
また、夫婦でも住まいに対する考え方が違うことがあります。自分は庭付きの一戸建てが欲しいと思っていても、パートナーは駅に近い賃貸マンションの方が便利だと感じるかもしれません。大切なのは、どちらかの希望を優先することではなく、お互いが何を大切にしているのかを理解することです。
7.持ち家か賃貸か、購入のタイミングも大切
特に、結婚したばかりのご夫婦や、これから子育てを考えている方にお伝えしたいことがあります。それは、「持ち家か賃貸か」という選択とともに、「いつ家を購入するか」というタイミングも大切だということです。
例えば、これから子どもが生まれる予定があったり、転職や転勤の可能性があったりする場合、現在の生活や希望だけをもとに住宅を購入すると、数年後に暮らし方と住まいが合わなくなることも考えられます。そのような場合、しばらく賃貸住宅で暮らし、仕事や家族構成がある程度定まってから購入するという選択もあります。
逆に、住みたい地域や将来の暮らし方が明確で、家計にも無理がないのであれば、早めに持ち家を取得し、長く住み続けるメリットもあるでしょう。
ただし、購入を先延ばしにすれば、その間に住宅価格や金利が変動する可能性もあります。反対に、慌てて購入すれば、予算や物件選びで後悔するかもしれません。重要なのは、目先の価格や金利だけで決めず、出産や育児休業、教育費、転職、老後など、将来の家計の変化も踏まえて考えることです。そのためには、家族のライフプランを考え、将来の収入・支出や貯蓄の推移を確認することも有効です。
「今、住宅ローンを返済できるか」だけでなく、「将来も無理なく暮らしていけるか」まで見据えたいところです。
8.家は「目的」ではなく、豊かに暮らすための「手段」
持ち家と賃貸、どちらがおトクなのか。ここまで見てきたように、経済的な損得は条件によって変わり、住まい方の向き・不向きも人それぞれです。私は、家を購入すること自体が人生の目的ではないと考えています。家はあくまで、自分たちや家族が豊かに暮らすための「手段」です。
そのため、持ち家か賃貸かを決める前に、まずは自分たちがどのような暮らしをしたいのか、何にお金を使いたいのか、将来どのような人生を送りたいのかを考えてみてはいかがでしょうか。そのうえで、理想の暮らしと家計の現実を照らし合わせ、自分たちに合った住まい方を選んでいただきたいと思います。
なお、10月31日(土)に刈谷・知立ハウジングセンターで開催するセミナー「持ち家と賃貸、どちらがおトク!?」では、今回ご紹介した50年間の住居費比較を具体的な数字で解説するほか、自分たちに合う住まい方を考える「住まい方タイプ診断」なども行います。
持ち家と賃貸、どちらが自分たちに合っているのか。詳しくは、10月31日(土)のセミナーにてお聞きください。
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名古屋駅前の住宅専門ファイナンシャルプランナー
家計とマイホーム相談室 草野芳史
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