このところ住宅ローンの金利が上がり、毎月の返済額や今後の返済計画に不安を感じている方も多いのではないでしょうか。そんな中、4月28日、日銀(日本銀行)は金融政策決定会合で3会合連続となる「政策金利の据え置き」を決めました。
「据え置きなら、ひとまず安心」「住宅ローン金利の上昇も止まるのでは」と感じた方もいるかもしれません。でも、今回の決定は“金利上昇の終了”を意味するものではありません。むしろ、方向としては利上げ路線を維持しつつ、利上げのタイミングを見計らっている段階と考えてよいでしょう。今回は、この決定が住宅ローンにどう関わるのかを、変動金利・固定金利に分けて整理します。
1.ポイント 今回の据え置きは「金利上昇ストップ」ではない
今回の日銀の決定を一言でいえば、利上げをやめたのではなく、次の一手(利上げ時期)を見極めるための据え置きです。
実際、日銀は政策金利を0.75%程度で維持することを6対3の賛成多数で決定しました。また、同時に公表された展望レポートでは、経済・物価情勢に応じて、今後も政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく考え方が示されています。つまり、今回の据え置きだけを見て「もう上がらない」と考えるのは早計です。
2.そもそも政策金利とは何か
政策金利は、日銀が景気や物価の安定を図るために使う、重要な「金融政策の手段」です。景気が過熱し、物価が上がりすぎるときには金利を引き上げてお金の流れを抑えます。逆に、景気が弱いときには金利を下げて、経済活動を支えます。
今回の会合でも、日銀は「現在の実質金利はきわめて低い水準にある」としたうえで、基調的な物価上昇率が2%に近づいているとの認識を示しています。これは、超低金利を続けた局面から、少しずつ正常化=金利のある世界に向かっていく局面にあることを意味します。
3.政策金利と住宅ローンとの関係(変動と固定は、動く仕組みが違う)
ここは住宅ローン選びで誤解されやすいポイントです。政策金利の影響を受けやすいのは、主に変動金利タイプです。短期金利や短期プライムレートの動きが反映されやすいためです。実際、2025年12月の日銀の利上げ以降、2026年春にかけて変動金利は上昇し、1%前後が珍しくない水準になってきました。
一方で、全期間固定金利や固定金利期間選択型は、主に長期金利や金融機関の調達環境の影響を受けます。 一般には「10年国債の利回りが目安」と説明されることが多いのですが、実務上はそれだけでなく、市場金利全体の見通しや金融機関の資金調達コストも反映されます。ですから、政策金利が据え置かれたからといって、固定金利まで据え置かれるとは限りません。
4.なぜ今回は据え置きになったのか
今回の政策金利据え置きの背景には、主に「不確実性を見極めたい」という日銀の姿勢があると考えられます。
ひとつは、中東情勢や原油価格上昇の影響です。原油高は物価を押し上げる一方で、家計や企業の負担を重くし、景気を下押しする面もあります。こうした供給ショックへの影響を見極めるため、「様子見」の判断になったと言えます。
もうひとつは、経済は減速リスク、物価は上振れリスクという、判断の難しい状況にあることです。日銀の4月展望レポートでも、2026年度は原油価格上昇の影響で成長ペースが鈍る一方、物価は2%台後半と高めで推移する見通しが示されました。つまり、「景気には配慮したいが、物価面では引き締め方向を維持したい」という、判断の難しい環境にあるわけです。
さらに今回は、据え置き自体が全員一致ではなかった点も重要です。票決は6対3。9人の委員のうち3人は、0.75%据え置きではなく1.0%程度への引き上げを主張しました。これは、日銀内部でも「もう一段の利上げが必要ではないか」という見方が相応に強いことを示しています。
5.住宅ローンへの影響
① 変動金利タイプは「すぐ安心」とは言えない
今回の据え置きによって、変動金利は当面は落ち着いた動きになると考えられます。少なくとも、4月28日の決定そのものが直ちに新たな上昇圧力になるわけではありません。
ただし、ここで勘違いしてはいけないのは、変動金利の上昇局面が終わったわけではないということです。2025年12月の利上げの影響は、2026年春にかけて各金融機関に順次反映され、すでに変動金利1%前後が広がっています。以前のような「0.5%台が当たり前」の時代とは明らかに状況が変わり、日銀はさらなる利上げに向けて時期を見極めていると言えます。
したがって、変動金利を検討している方や、現在変動金利で返済中の方が持つべき視点は、「今月上がるか、据え置きか」ではありません。今後0.25%、0.5%と上がっても家計が耐えられるかです。変動金利は、目先の低さに安心して選ぶものではなく、将来の上昇局面まで含めて選ぶものです。
② 固定金利タイプは「政策金利の据え置き」より先行きが大事
固定金利タイプについては、今回の据え置きが市場予想の範囲内だったこともあり、直接的な影響は限定的と見てよいでしょう。
ただ、固定金利は「今回据え置いたかどうか」よりも、今後の金融政策の方向感に左右されます。今回の日銀は、展望レポートで引き続き利上げ方向を維持する姿勢を示しています。これを踏まえると、長期金利が高止まりしているため、固定金利は下がりにくい局面と見ておくほうが自然です。
実際、4月の住宅ローン市場では、フラット35を含む固定金利タイプでも上昇が目立ちました。単月で見ても上昇幅は小さくなく、「固定ならまだ安心して低い」という時代でもなくなっています。
③「一部の銀行が下げた」だけで流れが変わったとは言えない
最近は、楽天銀行のように一時的に変動金利を引き下げる動きも見られました(詳しくはコチラの記事)。ですが、これは市場全体の金利トレンドが反転したことを意味するものではありません。銀行ごとの見直しルールや参照指標、営業戦略によって、一時的に見かけの金利が下がることはあります。
借り手の立場で大切なのは、「いま一番低く見える金利」だけで判断しないことです。表面金利だけでなく、手数料、団信の内容、将来の見直しルール、借換えのしやすさまで含めて見なければ、本当に有利かどうかは分かりません。これは、金利が動き始めた今の時代ほど重要になります。
6.住宅購入や住宅ローン選びの際の考え方
住宅取得を考えている方や現在住宅ローンを返済中の方にとって、今は決して楽な環境ではありません。建築費は高止まりし、土地価格もエリアによって上昇や二極化が進み、そこに金利上昇が重なっています。つまり、家づくりや住宅購入に必要なお金全体が、以前より重くなっているのです。
だからこそ、FPとしてお伝えしたいのは、金利を当てにいかないことです。「変動と固定、どちらが正解か」を探すより先に、
・金利が0.5%上がったら返済額はいくら増えるのか
・教育費が増える時期と重ならないか
・車の買い替え、老後資金、修繕費まで見込めているか
・万一のときに貯蓄や繰上返済で調整できるか
こうした点を数字で確認することのほうが、はるかに重要です。住宅ローン選びは金利当てゲームではなく、家計の耐久力を確かめる作業です。
7.FPとしての見方 いまは「金利のある世界」への移行期
今回の政策金利の据え置きは、金利上昇の流れが止まった場面というより、“金利のある世界”への移行過程の一場面と捉えるべきです。日銀は4月の据え置きと同時に、今後も状況に応じて政策金利を引き上げる考えを崩していません。
そんな中で、住宅ローン利用者がやるべきことも明確です。「金利が上がらないことを期待して借りる」のではなく、上がっても暮らしが崩れないように借りる。ここを十分意識しておきましょう。
8.まとめ
2026年4月28日の日本銀行の政策金利据え置きは、金利上昇局面の終了を意味するものではありません。今回のポイントを整理すると、次の通りです。
・政策金利は0.75%で据え置きとなった
・ただし票決は6対3で、追加利上げを主張する委員もいた
・日銀は展望レポートで、引き続き利上げ方向を維持している
・変動金利は短期的に落ち着いても、上昇トレンド自体が消えたわけではない
・固定金利も、先行きの利上げ観測が残る以上、下がりやすい環境ではない
これから住宅ローンを検討する方は、
・金利が低い前提で考えない
・将来の上昇も織り込む
・家計全体で無理のない水準を確認する
ようにして下さい。
住宅ローンの正解は、他人のおすすめ商品ではなく、あなたの家計に無理がないことです。据え置きのニュースで安心するのではなく、今こそ資金計画や家計を見直すタイミングだと捉えましょう。
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