インターネットを見ていたら出てきたのが「タワマン住み夫婦 余裕ない生活」との文言。クリックしてみるとテレビ番組の紹介記事なのですが、とても興味深い内容だったので番組ホームページを検索し、放映された動画も見てみました。それがマイホームを考えるうえでとても示唆されるものだったので、感想も含めてご紹介してみます。
ネットではこの手のセンセーショナルな見出しを掲げる記事が良くあります。今回のネット記事も「タワマンに住む57歳美魔女が駐車場でバイト?「遺書書きました」…耳を疑う告白の連続!」などなど、スゴイ見出しが躍ります。この番組は、テレビ東京の「家、ついて行ってイイですか?」。街中を歩く一般視聴者の自宅までついて行って、様子をレポートするという番組です。今回は6月14日(月)に「鶴見のタワマンに住む57歳&60歳夫婦! 鶴見マダム生活を過ごしていたけど……!?」とのタイトルで放映されました。番組内に踊るキャプションも「絶景マンション!さよならの瞬間・・・美人妻の告白」「横浜市!絶景マンション還暦夫婦」「セレブな美魔女と思いきや 取材中に告白で衝撃の結末」「「経済的に無理なことは承知」夫婦が高級タワマンへの移住決めた理由」と、さらに刺激的。「100均グッズとおにぎりで生活 無理してタワマンに住むワケ」と、いったいなぜそこまでしてタワーマンションにこだわるのかと思わせられます。
実際、このご夫婦の部屋は駅前の31階建てタワーマンションの27階角部屋で、羽田空港や横浜のランドマークタワーまで一望できる絶景。10年前に8210万円で購入しています。まわりの住民は医者・弁護士のところ、こちらのご主人は定年間近の会社員。毎月の住宅ローン返済額が32万円さらに、管理費5万円の負担にご主人の収入だけでは足らず、奥様アルバイトをし、さらに昼食は夫婦ともにおにぎり1個だけで済ますもさすがに厳しく、来週退去することに。。。これだけ見ると「背伸びし過ぎた夫婦の末路か!?」と思えるのですが、そうではありません。
60歳のご主人Aさんは、10年前に大動脈解離という大病を経験し、いまもリハビリ中。50歳台後半の奥さまTさんも胃がんや子宮筋腫でかつて10年間寝たきりに。そのため「また病気になる前にやれることやっとかないと」「経済的に無理だと思ったから、1~2年だけ住もう」「今までのマンションローンから3倍くらいになるが、それでも挑戦したかった」と思い切って購入することに。購入したところ「病気で失われた10年取り返そうと思って、いますごい必死」に働いていたら、結果的に「再発や転移を忘れて、元気で突っ走る」ことが出来たそう。「住んで最高だった。駅近だし、景色もいい」から、「アップアップだったけど、後悔はない」と断言しています。
とはいえ、いくら充実して後悔が無かったとしても、結局マンションを手放して出ていかなければいけなくなったのでは、元も子もないのでは?と思うかもしれません。が、ちゃんとオチがあります。このマンションを売却し、住宅ローンを返して残った差額で、駅前に建つ3000万円の戸建て住宅を買えてしまったのです! 何ともまぁ、かつての「住宅すごろく」のようなハッピーエンド!
そりゃ、テレビで取り上げられるほどドラマチックなお話しだけど、なかなかそううまくいかないんじゃないの?という声も聞こえそうです。確かに、このご夫妻だからこそ結果的にうまくいったと言える面はあります。例えば、ご主人は一会社員といいつつ、グループ全体で2000人を擁する通信系会社の管理職(本部長)なのでそれなりの高給取りです。奥様も結婚前の20~35歳に月収5~60万のパーティコンパニオンだったとのことで、それなりの貯えもあったでしょう。また、不妊治療はしたものの子どもはできなかったので子どもの教育費もかからず、駅前に住むので車も持たず。そして、このマンションに住むために食べ物も外食などもってのほか、スーパーの特売や百均ををフル活用し、徹底的に住む場所のために家計を回しています。
ここまでの努力は普通の人には参考になりにくいとは思いますが、ファイナンシャルプランニング的には、このご夫妻は当然のことをしています。それは、「家計に収支をいかに合わせるか」ということ、そして「そのために家計や生活の優先順位を明確にする」ということを徹底しているということです。このご夫妻にとっては、食生活などよりもこのマンションで暮らすことが何より重要で、気持ちが落ち込んでいても部屋からの眺めを見ていると気持ちが癒されるわけです。さらに「ここに住むなら頑張らなきゃ」と、目の前に来る嫌な仕事も全部請けていたら認められて出世したり、病気も再発していないなど、このご夫妻にとっては、暮らし方や働き方を割り切ってこのマンションを購入したことで、人生が豊かになったと言えます。さらに、高い買い物の駅前のタワマンですが、それだけ人気があるので資産価値も落ちずに少なくない売却益を手にし、終の棲家を手に入れることができました。そこまで計画していたかは分かりませんが、優先順位を付けて努力したことによる正当な結果と言えると思います。
こういった事例からも良く分かりますが、やはり住まいや暮らし方、そしてお金の考え方は人によって千差万別。ハタから見たら「エッ、なんでそんなことするの!?」と思えても、当人が納得していれば誰も否定できるものではありません。ただ、だからこそすべてのものを追い求めると逆に中途半端になったり、求め過ぎた結果、家計的に破綻する可能性もあります。そのためにこそライフプランをもとに家計を考えることと、これから家族でどんな暮らしをしたいかを考えることが重要なのです。このご夫妻とは違い、暮らしを楽しむために、家へかけるお金を最小限に抑えるという人もいることでしょう。幸せのカタチは人それぞれ。そんなことを改めて強く感じました。
※動画は、6月29日(火)11:59までコチラで公開されています
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マイホーム購入前に、中立な第三者にご相談を!
名古屋駅前の住宅専門ファイナンシャルプランナー
家計とマイホーム相談室 草野芳史
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