土地の価格が上がっているというニュースを見ると、「やはり早く買った方がよいのか」「もう手が届かなくなるのでは」と不安になる方も多いのではないでしょうか。
2026年7月1日、国税庁から令和8年分の路線価が公表されました。今回は、全国と東海地方の動向を整理しながら、これから住宅購入を考える方がどう受け止めればよいのかを見ていきます。
1.ポイント
2026年分の路線価は、全国平均で5年連続の上昇となりました。ただし、住宅購入者が注意したいのは、「全国平均が上がった」という一言だけで判断しないことです。
今回のポイントは、次の3つです。
・全国平均は上昇しているが、都市部・観光地・駅前などの影響が大きい
・東海地方では、名古屋駅前を中心に上昇が続く一方、地域差も大きい
・住宅購入では、地価の上昇よりも「家計に合う予算」と「将来も選ばれる土地か」が重要
つまり、「地価が上がっているから急いで買う」というよりも、上がっている理由と地域差を冷静に見ることが大切です。
2.そもそも路線価とは?
路線価とは、その道路に面している標準的な宅地の1㎡当たりの価額で、主に相続税や贈与税における土地の評価に用いられます。
国税庁によると、路線価等は全国の民有地の宅地、田、畑、山林等を対象に定められます。また、路線価等の評価における宅地とは、住居、商業、工業の用途にかかわらず、建物の敷地となる土地を指します。路線価等は毎年1月1日を評価時点とし、1年間の地価変動などを考慮して、地価公示価格等を基にした価格の80%程度を目途に定められています。
ここで注意したいのは、路線価は「実際の売買価格」そのものではない、という点です。実際の土地取引では、立地、道路付け、土地の形、周辺環境、建築条件、売主・買主の事情などによって価格が変わります。路線価はあくまで税務上の評価基準ですが、地価の大きな流れを見る材料としては参考になります。
3.全国平均は5年連続上昇、上昇幅も拡大
2026年分の路線価は、全国平均で前年比2.9%の上昇となり、5年連続の上昇となりました。前年の上昇率を上回っており、地価上昇の流れが続いていることが分かります。
全国で最も高かったのは、東京都中央区銀座5丁目の銀座中央通りで、1㎡あたり5,336万円。41年連続で全国トップとなり、前年比11.0%の上昇でした。また、大阪・御堂筋、横浜駅西口、名古屋駅前など、主要都市の一等地も引き続き高い水準となっています。
報道などを見ると、今回の路線価上昇の背景としては、主に次のような点が挙げられています。
・都市部の再開発
・インバウンド需要の回復
・ホテルや店舗などの投資需要
・駅前や利便性の高いエリアへの需要集中
・住宅地の底堅い需要
一方で、全国平均が上がっているからといって、全国どこでも同じように上がっているわけではありません。上がっている場所はより上がり、需要が弱い場所は伸び悩む。この「二極化」は、ここ数年の地価動向で一貫して見られる傾向です。
4.東海地方では名古屋駅前が最高価格
東海3県で最も路線価が高かったのは、名古屋市中村区名駅1丁目の名駅通りです。2026年分は、1㎡あたり1,304万円。前年比1.2%の上昇で、東海3県では22年連続の最高価格となりました。全国の都道府県庁所在地の最高路線価でも、東京・銀座、大阪・御堂筋、横浜駅西口に続く高い水準です。名古屋駅周辺は、リニア中央新幹線への期待、オフィス・商業集積、再開発、交通利便性などが重なり、東海地方の地価をけん引するエリアです。
ただし、前年比1.2%という上昇率だけを見ると、急激な上昇というよりは、高い価格水準を維持しながら、やや落ち着いた動きにも見えます。ここは大事なところです。名古屋駅前は「高い」。でも、「さらに大きく上がっている」とは限りません。地価を見るときは、価格の高さと上昇率を分けて見る必要があります。
5.愛知県内では駅前・生活利便性の高い地域に上昇が広がる
愛知県内では、名古屋駅前だけでなく、栄、金山、御器所、刈谷、一宮、春日井・勝川周辺など、交通利便性や生活利便性の高いエリアで上昇が目立ちます。
例えば、名古屋市中区栄3丁目の大津通りは、商業地としての集積があり、栄エリアの再開発や人流回復の影響を受けやすい場所です。また、金山、御器所、刈谷、一宮、勝川などは、都心部ほどの派手さはありませんが、住宅購入者にとっては「暮らしやすさ」と「交通の便利さ」が両立しやすい地域です。
特に近年は、住宅価格や建築費が上がる中でも、次のような条件を満たす土地には需要が集まりやすくなっています。
・駅に近い
・通勤しやすい
・買い物や医療、教育施設が整っている
・将来売却や賃貸に出しやすい
愛知県の地価上昇は、単に「名古屋中心部が強い」というだけでなく、生活利便性の高い住宅地や、産業集積のあるエリアにも広がっていると見ることができます。
6.岐阜県・三重県は観光地や駅前に強さ
岐阜県では、高山市上三之町、いわゆる古い町並み周辺の上昇が目立ちました。2026年分の路線価は前年比23.5%上昇し、1㎡あたり42万円となっています。報道では、外国人観光客の増加に伴う店舗需要やホテル開発への期待が価格を押し上げたとされています。
一方、三重県では、近鉄四日市駅前の四日市市安島1丁目が県内最高価格となり、1㎡あたり40万円と報じられています。
岐阜県や三重県を見ると、愛知県以上にエリア差が大きい印象です。観光地、駅前、名古屋方面へのアクセスがよい地域、産業の集積がある地域では上昇しやすい一方、人口減少が進む地域や交通利便性が弱い地域では、地価上昇の波が届きにくい状況もあります。
つまり、東海地方全体をひとまとめにして「上がっている」「下がっている」と見るのは危険です。同じ県内でも、市町村によって違います。同じ市内でも、駅に近いか、生活利便性があるか、将来の需要が見込めるかで違います。さらに同じ町内でも、道路付けや土地の形によって価格は変わります。土地価格は、思った以上に“細かい性格”を持っていると言えます。
7.住宅地も上昇基調だが、家計負担は重くなる
今回の路線価だけでなく、2026年3月に公表された国土交通省の地価公示でも、全国的には住宅地の上昇基調が続いています。特に、都市部や利便性の高い地域では、住宅需要が底堅い状況です。
ただし、住宅購入者の立場から見ると、地価上昇は手放しで喜べる話ではありません。すでに建築費は高止まりしています。さらに住宅ローン金利も、以前のような超低金利を前提には考えにくくなっています。土地、建物、金利。この3つの上昇が重なると、住宅購入者の家計にはかなりの負担になります。
8.地価上昇で「急いで買う」は正解か?
ここでよく出てくるのが、「これからも土地が上がるなら、早く買った方がよいのでは」という考え方です。たしかに、結果だけ見れば、数年前に買っておけばよかったというケースはあります。
しかし、これから買う方にとって大切なのは、「過去に買っておけば得だったか」ではありません。これからの家計で、無理なく持ち続けられるかです。
土地価格が上がっているときほど、次のような判断が必要です。
・希望エリアの価格上昇は一時的なものか、構造的なものか
・将来も住みたい人がいる場所か
・住宅ローン返済に無理がないか
・教育費や老後資金にしわ寄せが出ないか
・売却や賃貸など、将来の選択肢が残るか
地価上昇のニュースは、住宅購入の背中を押す材料にはなります。ただし、背中を押されすぎて前のめりになると、家計がつまずきます。住宅購入では、勢いよりも足元確認が大切です。
9.草野の見解|路線価上昇時代の土地選び
今回の路線価を見ると、全国的にも東海地方でも、地価上昇の流れは続いています。ただ、住宅購入者にとって大切なのは、「上がっているから急ぐ」ことではありません。土地価格、建築費、住宅ローン金利が同時に上がっている今こそ、家計全体から購入予算を決めることが重要です。
不動産会社や住宅会社では、どうしても「買える物件」「建てられる建物」から話が進みがちです。しかし、住宅購入者にとって本当に大切なのは、「買えるか」ではなく「買った後も暮らし続けられるか」です。
そのためには、住宅ローンだけでなく、教育費、車の買い替え、老後資金、修繕費、固定資産税なども含めた家計の将来予測が必要です。私がよくお伝えしているのは、住宅購入前に「家計の将来予測地図」として、ライフプランを作っておくことです。
地価のニュースを見ると、つい「今買うべきか」「待つべきか」という二択で考えてしまいます。しかし本当は、次のように考える方が現実的です。
・わが家はいくらまでなら無理なく買えるのか
・どの地域なら将来の選択肢が残るのか
・土地と建物の予算配分は適切か
・金利が上がっても返済を続けられるか
・資産性だけでなく、暮らしやすさも確保できるか
また、路線価は売買価格そのものではありませんが、住宅購入者にとっても参考になります。例えば、過去数年の路線価を見れば、その地域が上昇傾向なのか、横ばいなのか、下落傾向なのかを確認できます。また、候補地同士を比較することで、駅前と郊外、利便性の高い地域とそうでない地域の違いも見えてきます。
さらに、将来売却する、貸す、住み替えるといった可能性を考えるうえでも、路線価は土地の資産性を考える一つの材料になります。地価が上がる時代ほど、焦って決めるのではなく、判断基準を持つことが大切です。
土地価格は確かに上がっています。でも、家計の安全余裕まで削って買う必要はありません。「いくらまで出せるか」ではなく、「いくらなら、家族の暮らしを守りながら持ち続けられるか」。この視点を忘れずに、土地選びと住宅購入を進めていただきたいと思います。
10.まとめ|路線価上昇は「急げ」ではなく「見極めよ」のサイン
2026年分の路線価は、全国平均で5年連続の上昇となりました。東海地方でも、名古屋駅前を中心に高い水準が続き、愛知県内の利便性の高いエリアや、岐阜・三重の観光地・駅前でも上昇が見られます。
ただし、住宅購入者が受け止めるべきメッセージは、「早く買わないと損をする」ではありません。地価は全国一律ではなく、地域差があります。人気エリアは下がりにくい一方で、家計に合う価格かどうかは別問題です。土地価格だけでなく、建築費、住宅ローン金利、将来の暮らし方まで含めて考える必要があります。
路線価の上昇は、購入を急がせる号砲ではなく、地域差と家計を見極めるサインです。地価の動きを冷静に読み取り、わが家に合った予算と土地選びを進めていきましょう。住宅購入は、土地の価格競争ではなく、家族の暮らしを守るための長期計画です。路線価のニュースも、そのための判断材料の一つとして活用していきましょう。
🔗 過去の地価動向はコチラ
・【速報】2026年公示地価 住宅地は上昇も二極化が続
https://my-home-fp.com/column/20260319/
・【速報】名古屋圏の地価は上昇鈍化? 2025年基準地価から読み解く住宅地価格
https://my-home-fp.com/column/20250917/
・【2025年 夏版】宅地価格は上がる?下がる? 東海3県の「路線価の動き」と今後の住宅購入のヒント
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・2025年公示地価 全国平均で4年連続上昇
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・都道府県地価発表 住宅地の全国平均が3年連続上昇
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・路線価が全国平均で3年連続上昇
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・全国平均で3年連続対前年比上昇 2024年公示地価
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