6月に日銀が政策金利を引き上げるなど、住宅ローン金利への上昇圧力が続いています。さらに7月末には、急速な円安を抑えるため、日米協調による大規模な円買い介入も行われました。
そんななか、各金融機関から8月の住宅ローン金利が発表されました。「今月はどこまで上がったのか」「変動金利も上がるのか」と気になっている方も多いでしょう。
2026年8月は、固定金利期間選択タイプや全期間固定金利タイプを中心に、多くの金融機関が金利を引き上げました。今回のコラムでは、8月3日時点の金利動向とその背景、今後の見通しを整理します。
1.2026年8月の住宅ローン金利のポイント
まず、今月のポイントをまとめます。
・固定金利期間選択タイプと全期間固定金利タイプは、多くの金融機関で金利引き上げ
・フラット35は前月から0.15%上がり、融資率9割以下で3.29%
・変動金利も、6月の日銀利上げを受けて引き上げる金融機関が増加
・日米の為替介入は8月金利には反映されていないものの、今後の金利を左右する材料
・金利の高低だけでなく、家計が金利上昇にどこまで耐えられるかで選ぶことが重要
8月は、一部に例外はあるものの、住宅ローン金利全体に利上げ色が強まった月といえるでしょう。
2.8月は固定金利を中心に多くの銀行が利上げ
各金融機関が発表した8月の住宅ローン金利を見ると、メガバンクや信託銀行、ネット銀行、地方銀行、信用金庫まで、幅広い金融機関で固定金利期間選択タイプや全期間固定金利タイプが前月から引き上げられています。
代表的な10年固定金利を7月と比較すると、次のようになっています。
| 金融機関 | 7月 | 8月 | 前月差 |
| みずほ銀行 | 3.40% | 3.55% | +0.15% |
| 三井住友銀行 | 4.25% | 4.40% | +0.15% |
| 三菱UFJ銀行 | 3.35% | 3.59% | +0.24% |
| りそな銀行 | 3.615% | 3.795% | +0.18% |
| 三井住友信託銀行 | 3.865% | 4.155% | +0.29% |
| SBI新生銀行 | 2.95% | 3.05% | +0.10% |
| PayPay銀行 | 2.770% | 2.87% | +0.10% |
金融機関によって商品内容や金利優遇の条件が異なるため、数字だけで単純に比較することはできません。ただ、8月は3年・5年といった短めの固定期間だけでなく、10年、20年、30年、35年など、幅広い期間で金利が上昇しています。
なお、楽天銀行の固定金利など、一部には前月からわずかに下がった商品もあります。そのため、すべての金融機関が利上げしたわけではありませんが、全体としてはほぼ全面高と見てよいでしょう。
3.固定金利上昇の背景は長期金利の再上昇
固定金利期間選択タイプや全期間固定金利タイプは、長期金利(日本の10年モノ国債の利回り)などの市場金利を参考に決められます。7月には長期金利が一時2.9%まで上昇し、月末時点でも2.8%前後の高い水準で推移しました。こうした7月中の市場金利の動きが、8月の住宅ローン固定金利を押し上げたと考えられます。
長期金利が上昇している背景には、複数の要因があります。背景の一つに、物価上昇が続き、日銀が今後も金融政策の正常化を進めるとの見方があります。日銀は2026年6月の金融政策決定会合で、政策金利を1.0%程度へ引き上げました。
また、原油価格や輸入物価、円安への警戒に加え、政府の財政支出や国債発行額の増加、日銀による国債買い入れの縮小なども、国債金利を押し上げる材料となります。つまり、固定金利は日銀の政策金利だけで決まるわけではありません。物価、為替、財政、国債の需給、海外金利など、さまざまな要因を市場が先回りして織り込んでいるのです。
4.フラット35は0.15%上がり3.29%に
2026年8月のフラット35の金利も上昇しました。返済期間21年以上35年以下、新機構団信付きの最も多い金利は、次のとおりです。
| 融資率 | 7月 | 8月 | 前月差 |
| 9割以下 | 3.14% | 3.29% | +0.15% |
| 9割超 | 3.25% | 3.40% | +0.15% |
住宅金融支援機構の公表値でも、融資率9割以下の最も多い金利は年3.29%となっています。7月は4カ月ぶりに金利が下がりましたが、8月は再び上昇に転じました。
さらに、融資率9割以下のフラット35は、2026年3月の2.25%から、8月には3.29%まで上がっています。わずか5カ月で1.04%の上昇です。例えば、4,000万円を35年返済、元利均等返済、ボーナス返済なしで借りた場合、概算の毎月返済額は次のようになります。
・金利2.25%:約13.8万円
・金利3.29%:約16.0万円
毎月約2.3万円、年間では約27万円の差です。金利上昇による返済負担の増加は、無視できない水準になっています。
◆金利が上がってもフラット35は有力候補
フラット35が3%台になり、「もう選びにくい」と感じる方もいるかもしれません。しかし、民間金融機関の30年・35年固定を見ると、3%台後半から4%台、一部では5%台の商品もあります。表面金利だけを比較すれば、フラット35にはまだ一定の割安感があります。また、住宅の性能や子育て世帯などの条件を満たせば、フラット35Sや子育てプラスなどによる、当初5年または10年間の金利引き下げを利用できる場合があります。
もちろん、フラット35がすべての方に向いているわけではありません。団体信用生命保険の保障内容、事務手数料、借入期間、繰上返済の予定なども含めて比較する必要があります。それでも、将来の金利上昇によって返済額が増えることを避けたい方には、有力な選択肢になるでしょう。
フラット35は単に「金利が固定された住宅ローン」ではなく、将来の返済額を確定し、家計の見通しを立てやすくするための商品でもあります。
5.変動金利も引き上げる金融機関が増加
8月は、変動金利にも動きが出ています。主な例を挙げると、次のとおりです。
| 金融機関・商品 | 7月 | 8月 | 前月差 |
| 住信SBIネット銀行 | 0.950% | 1.200% | +0.25% |
| 楽天銀行 | 1.500% | 1.543% | +0.043% |
| 東京スター銀行 | 1.40% | 1.65% | +0.25% |
| イオン銀行 | 1.070% | 1.120% | +0.05% |
※借入条件や団信プランなどにより、適用金利は異なります。
6月の日銀による政策金利引き上げを受け、変動金利を引き上げる金融機関が徐々に増えています。一方、三菱UFJ銀行やりそな銀行、ソニー銀行、PayPay銀行など、8月時点で前月から据え置いている金融機関もあります。
変動金利は日銀の政策金利や短期プライムレートの影響を受けますが、すべての銀行が同時に、同じ幅だけ引き上げるわけではありません。金融機関によって、次のような条件が異なるためです。
・基準金利の見直し時期
・新規借入者への適用時期
・既存借入者への適用時期
・金利優遇幅
・資金調達コスト
・住宅ローンの販売戦略
そのため、変動金利を比較するときは、現在の適用金利だけでなく、基準金利や優遇幅、金利の見直し時期も確認する必要があります。
6.日銀が据え置いても固定金利は下がるとは限らない
日銀は7月31日の金融政策決定会合で、政策金利を1.0%程度に据え置きました。日銀の次回会合は、9月17日・18日に予定されています。ただし、7月31日の決定は8月金利への反映には間に合わず、主に9月以降の金利を考える材料となります。
また、政策金利が据え置かれたからといって、固定金利も据え置きや利下げになるとは限りません。固定金利は、現在の政策金利だけでなく、今後の利上げ予想や物価、財政、国債需給などを織り込んだ長期金利を基準としているためです。
このため、政策金利の据え置きだけを見て、固定金利も下がると判断することはできません。今後は、物価や為替、国債市場の動きも併せて見る必要があります。
7.日米の為替介入は今後の金利にどう影響する?
7月末には、急速な円安を受け、日本政府による円買い・ドル売り介入に加え、米国も円買いに動く異例の日米協調介入が行われました。ただし、この為替介入も、8月の住宅ローン金利には反映されていません。主に9月以降の金利を見るうえでの材料となります。
◆円高が定着すれば金利上昇を抑える可能性
為替介入によって円安が修正され、円高傾向が続けば、原油や食料品、建材、設備機器などの輸入価格を抑える効果が期待できます。
輸入物価の上昇が落ち着けば、国内の物価上昇圧力も弱まり、日銀が追加利上げを急ぐ必要性が低下します。その結果、日銀の追加利上げ観測や長期金利の上昇が落ち着き、変動金利・固定金利の上昇圧力が弱まる可能性があります。
つまり、円高が定着するなら、為替介入は住宅ローン金利の上昇を抑える方向に働くでしょう。
◆円安へ戻れば追加利上げ観測が強まる可能性
一方、為替介入の効果が一時的で、再び円安が進めば、輸入物価の上昇が続きます。その場合、「為替介入だけでは物価上昇を抑えられず、日銀の追加利上げが必要」との見方が、市場で強まる可能性があります。反対に円安が再び進めば、日銀の追加利上げ観測が強まり、短期金利と長期金利の双方を通じて、変動金利・固定金利に上昇圧力がかかる可能性があります。
為替介入は、急激な円安を止める強いけん制にはなりますが、住宅ローン金利の上昇を止める特効薬ではありません。円相場の基調は、最終的には日米の金利差や物価、景気、財政政策などによって決まるからです。
8.今後の住宅ローン金利はどうなる?
私の見方では、固定金利は当面、高い水準で上下しやすく、変動金利は各金融機関が時間差で引き上げる局面が続く可能性があります。
今後、金利を押し上げる要因としては、次のものが挙げられます。
・賃金と物価の上昇
・原油価格や輸入物価の上昇
・再度の円安
・日銀の追加利上げ
・政府の財政支出や国債発行の増加
・日銀による国債買い入れの縮小
反対に、金利上昇を抑える要因は次のとおりです。
・為替介入後の円高定着
・原油価格の下落
・国内外の景気減速
・物価上昇率の鈍化
・金融市場の混乱やリスク回避
・金融機関同士の住宅ローン獲得競争
固定金利は一直線に上がるわけではなく、7月のように一時的に下がる月もあるでしょう。しかし、金利を大きく押し下げていた超低金利政策が終わりつつある以上、以前の水準へ簡単に戻ることを前提にしない方が安全です。
9.金利の予想より家計の耐性を確認する
住宅ローンを検討している方にとって、金利が今後上がるか下がるかは気になるところです。ただ、為替や長期金利、日銀の政策を正確に予測し続けることは、金融の専門家でも簡単ではありません。住宅ローン選びで大切なのは、金利予想を当てることよりも、予想が外れても家計が持ちこたえられるようにしておくことです。
変動金利タイプを選ぶのであれば、金利がさらに1%、2%上昇した場合でも、返済を続けられるか確認しておきましょう。全期間固定金利タイプを選ぶ場合も、「安心だから」と高い返済額を受け入れるのではなく、その返済額が教育費や老後資金を圧迫しないかを見る必要があります。また、固定金利期間選択タイプは、当初の固定期間が終わった後に、金利や返済額が大きく上がる可能性があります。現在の金利だけでなく、固定期間終了後の条件も確認してください。
住宅ローンに万人共通の正解はありません。金利の低さだけで選ぶのではなく、将来の収入、教育費、住宅の維持費、老後資金などを含めたライフプラン(キャッシュフロー表)を作り、家計の金利上昇への耐性を確認することが大切です。
10.まとめ
2026年8月の住宅ローン金利は、長期金利の上昇を受け、固定金利期間選択タイプや全期間固定金利タイプを中心に、多くの金融機関で引き上げとなりました。
フラット35も前月から0.15%上がり、融資率9割以下の最も多い金利は3.29%です。一方、民間金融機関の長期固定と比べると、フラット35Sや子育てプラスを利用できる方には、引き続き有力な選択肢となります。
変動金利についても、6月の日銀利上げを受けて、引き上げる金融機関が増え始めました。ただし、反映時期や引き上げ幅は金融機関によって異なります。
7月末の日銀会合や日米の為替介入が、9月以降の金利にどのような影響を与えるかにも注意が必要です。これから住宅ローンを選ぶ方は、「どの金利が最も低いか」だけではなく、「金利が動いたときに家計がどうなるか」も確認してみましょう。住宅ローンは、金利予想に賭けるものではありません。長い返済期間を無理なく乗り切るために選ぶものなのです。
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