11月の住宅ローンの金利が各金融機関から発表されました。このところの住宅ローンは「金利が上がった」というニュースばかりでしたが、今月はちょっと様相が変わりました。大手銀行で10年固定の利下げが目立つ一方、東海地方の地銀・信金では利上げも見られました。さらに日銀は、基調的な物価上昇率が目標の2%程度に達したとの認識を示しています。これから金利はどうなるのでしょうか。今月の金利動向と金融政策の変化から、住宅ローン選びの判断材料を整理します。
1. この記事のポイント
2026年11月の住宅ローン金利と、今後の見通しについて、まずはポイントを整理します。
- 変動金利タイプは据え置きの金融機関がある一方、一部では利上げが続いています。
- 10年固定金利は、大手銀行の多くが利下げしたものの、東海地方の地銀・信金では利上げが目立ちました。
- 長期金利は10月後半に低下しましたが、固定金利が今後も下がり続けるとは限りません。
- 日銀は基調的な物価上昇率が2%程度に達したと判断しましたが、これは利上げ終了や利下げ開始を意味するものではありません。
金利の一時的な上げ下げだけでなく、その背景にある金融政策の変化を理解することが、住宅ローン選びでも重要になってきています。
2. 11月の住宅ローン金利 変動は一部で利上げ、フラット35は小幅に低下
■ 変動金利は据え置きと利上げが混在
まず、2026年11月の変動金利タイプを見てみましょう。三菱UFJ銀行は1.195%、みずほ銀行は1.275%、三井住友銀行は1.525%と、前月から据え置きとなりました。
一方、イオン銀行は1.120%から1.620%へ0.50ポイント、SBI新生銀行は1.430%から1.680%へ0.25ポイントの利上げとなっています。楽天銀行も1.747%から1.797%へ、小幅ながら上昇しました。
日銀は2026年6月に政策金利を1.0%、9月には1.25%へ引き上げています。その影響が金融機関ごとに異なるタイミングで住宅ローン金利に反映され、11月も対応が分かれたと考えられます。
なお、ここで紹介しているのは新規借入時の金利です。すでに借りている方の適用金利や毎月返済額がいつ変わるかは、金融機関や契約内容によって異なります。
■ フラット35は4カ月ぶりに利下げ
全期間固定金利タイプの代表格であるフラット35は、11月の最頻金利が3.81%となり、前月の3.83%から0.02ポイント低下しました。4カ月ぶりの利下げですが、引き下げ幅はわずかです。2025年12月の1.97%と比較すれば、依然として高い水準にあります。
※フラット35は、借入期間21年以上35年以下、融資率9割以下、新機構団信付きの最頻金利で比較しています。
3. 10年固定金利は大手銀行と地銀・信金で対応に違い
11月の金利動向で特に興味深いのが、固定金利期間選択タイプの10年固定金利です。
■ 大手銀行は利下げが目立つ
主な大手銀行の10年固定金利を、10月と11月で比較すると、次のようになっています。
| 金融機関 | 10月 | 11月 | 前月差 |
| みずほ銀行 | 3.60% | 3.40% | ▲0.20 |
| 三井住友銀行 | 4.00% | 3.70% | ▲0.30 |
| 三菱UFJ銀行 | 3.75% | 3.89% | +0.14 |
| りそな銀行 | 4.205% | 4.065% | ▲0.14 |
| 三井住友信託銀行 | 4.965% | 4.445% | ▲0.52 |
※前月差の単位は%ポイント。各行の代表的な商品を比較しており、商品・優遇条件によって金利は異なります。三井住友信託銀行は全期間引き下げ型を掲載しています。
5行のうち4行が利下げとなり、特に三井住友信託銀行は0.52ポイントと比較的大きな引き下げです。ただし、三菱UFJ銀行は逆に0.14ポイント引き上げており、同じ大手銀行でも判断が一致しているわけではありません。
■ 東海地方の地銀・信金では利上げが目立つ
これに対して、東海地方の地方銀行や信用金庫では、異なる動きが見られました。例えば、あいち銀行は3.375%から3.475%、岡崎信用金庫は3.35%から3.50%、瀬戸信用金庫は3.40%から3.60%、名古屋銀行は3.50%から3.65%へ上昇しています。三十三銀行も3.95%から4.20%へ引き上げました。
もっとも、大垣共立銀行は4.60%から4.45%へ引き下げており、地銀・信金がすべて利上げしたわけではありません。このように、同じ10年固定でも、金融機関によって金利の動きが分かれています。
■ なぜ同じ10年固定なのに違いが出るのか?
住宅ローンの固定金利は、長期金利などの市場金利を参考にしながら、各金融機関が決めています。しかし、市場金利が下がれば、すべての銀行が同じ幅で金利を下げるわけではありません。
金利改定の判断に用いる時点や、資金調達の方法、収益性、他行との競争、住宅ローンの販売方針などが異なることが考えられます。また、市場金利の低下を早めに反映させる銀行もあれば、それまでの金利上昇分を遅れて反映させる銀行もあるでしょう。
毎月多くの金融機関の住宅ローン金利を調査していると、金利は市場全体の動きだけでなく、金融機関それぞれの判断によっても変わることが分かります。住宅ローン選びでは、金融機関の規模や種類にとらわれず、実際の借入条件を比較することが大切です。
4. 長期金利が下がっても、固定金利が下がり続けるとは限らない
固定金利の動向を考えるうえで、重要なのが長期金利(日本の10年モノ国債の利回り)です。2026年10月1日に3.095%だった長期金利は、その後低下し、10月30日には2.755%となりました。11月2日も2.77%程度と、10月初めより低い水準で推移しています。こうした長期金利の低下も、一部の金融機関が11月の固定金利を引き下げた背景の一つと考えられます。
ただし、ここで注意したいのが、「今月下がったから、来月以降も下がる」とは限らないということです。国内では日銀の追加利上げの可能性が残っており、海外の金利動向や物価見通し、国債の需給なども長期金利に影響します。世界的な金利上昇圧力が完全に解消されたわけでもありません。また、長期金利は将来の金融政策や景気・物価の予想を織り込みながら動くため、日銀が利上げしたから必ず上がる、という単純な関係でもありません。
私の見方では、10月後半の長期金利低下には、これまでの上昇に対する一時的な調整という側面も考えられます。固定金利が本格的な低下局面に入ったと判断するには、まだ早いでしょう。中長期的には高止まりや再上昇の可能性も考えながら、住宅ローンを検討する必要があります。
5. 日銀が物価目標2%に「到達」と判断 金融政策は新たな段階へ
■ 10月の金融政策決定会合では利上げを見送り
日本銀行は2026年10月30日の金融政策決定会合で、政策金利を1.25%に据え置くことを決めました。6月、9月と続いた利上げは、ここでいったん見送られた形です。
ただし、利上げが終了したという意味ではありません。今回、政策金利の据え置き以上に注目したいのが、同時に公表された「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」です。日銀はこの中で、基調的な物価上昇率が、2%の「物価安定の目標」と概ね整合的な水準になっているとの認識を示しました。これまでの「2%に近づいている」という判断から一歩進み、目標水準に概ね到達したと認めたことになります。
■ 「物価上昇率2%」とは、どういう意味なのか?
日銀が目標としているのは、物価が前年比2%程度で安定的に上昇する状態です。
ここで重要なのが、「基調的な物価上昇率」という考え方です。食料品やエネルギーなどの価格は、天候や海外情勢によって一時的に大きく変動することがあります。こうした一時的な要因だけではなく、賃金や企業の価格設定なども含め、物価が持続的にどの程度上昇する力を持っているかを見るのが、基調的な物価上昇率です。
今回の日銀の判断は、ある月の物価指数がたまたま2%になった、という意味ではありません。また、今後も2%程度の物価上昇が安定して続くと確認できたわけでもありません。
日銀は2013年に2%の物価安定目標を掲げ、その実現に向けて大規模な金融緩和を続けてきました。その後、2024年3月のマイナス金利政策の解除や段階的な利上げを経て、物価の基調が目標と概ね整合的な水準になったとの認識を示したことは、金融政策の大きな節目といえるでしょう。
6. 物価目標2%を達成したら、もう利上げは必要ない?
日銀の発表を聞いて、「物価が目標の2%になったのなら、もう利上げは必要ないのでは?」と思う方もいるでしょう。あるいは、「目標を達成したのだから、今度は金利を下げるのでは?」という見方もあるかもしれません。しかし、どちらも必ずしも正しい理解ではありません。
■ 大切なのは、2%に到達することより、安定させること
そもそも物価安定目標の2%は、「物価が2%上がるようになったら、それ以上上がってはいけない」という上限ではありません。また、物価上昇率が2%ということは、物価が上がらなくなるのではなく、前年より約2%ずつ上昇する状態を意味します。
これまで日銀は、低すぎる物価上昇率を2%程度に引き上げるため、金融緩和を続けてきました。つまりこのところ金利を上げていたというのは、金融緩和を徐々に縮小していたということを意味します。しかし物価の基調が2%程度になったのであれば、今度はその水準を安定して維持することが重要になります。
例えば、景気が上向きで、賃金や物価の上昇が加速しているのに低金利を続ければ、物価上昇率が2%を大きく超えてしまうかもしれません。その場合には、金利をさらに引き上げて経済活動や需要の過熱を抑えることが、物価の安定につながります。反対に、景気が悪化し、物価上昇率が2%を継続的に下回ると予想される場合には、利下げが必要になる可能性もあります。
つまり、物価目標に到達したから利上げをやめるのではなく、物価を安定させるために景気状況を見ながら金利を調整していく段階に入りつつあるわけです。
■ 追加利上げの可能性は残っている
日銀は現在の金融環境について、なお緩和的との認識を示しています。そのため、経済・物価の見通しが実現していくのであれば、今後も政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくというのが基本的な考え方です。
そのため市場では、12月の金融政策決定会合で政策金利をさらに1.50%へ引き上げる可能性も指摘されています。ただし、利上げの時期や回数、最終的にどの水準まで金利が上がるかは、今後の景気や物価、賃金、海外経済などによって変わります。
私の見方では、今回の「物価2%」判断は、金融緩和の役割が終わり利下げに向かうという意味ではありません。むしろ、物価を2%に近づける段階から、2%程度で安定させる段階へと、金融政策の重点が移ってきたことが重要だと考えています。安定して物価2%を維持できた時が、日銀のいう「金融正常化」の状態になったと言え、そこまで到達するにはもう少し時間がかかるのではないでしょうか。
7. これからの住宅ローン選びで考えたいこと
こうした金融環境の変化を踏まえると、これから住宅ローンを借りる方も、すでに返済している方も、将来の金利上昇をある程度想定しておく必要があります。
変動金利タイプは、固定金利タイプに比べて借入当初の金利を低く抑えられる場合がありますが、将来の返済負担が増える可能性があります。
一方、全期間固定金利タイプなら、借入時に将来の返済額を確定できます。ただし、その安心感の代わりに、当初の返済負担が大きくなる場合もあります。また、10年固定などの固定金利期間選択タイプは、固定期間が終わった後の適用金利や優遇幅によって、返済負担が変わる点にも注意が必要です。
例えば、変動金利タイプを選ぶ場合には、現在の金利だけでなく、適用金利が現在より1%ポイント、2%ポイント上昇した場合の返済負担も試算しておきたいところです。
住宅購入時には毎月のローン返済額ばかりに目が向きがちですが、実際の家計には教育費や老後資金、住宅の維持管理費などもかかります。「どの金利タイプが一番お得か」だけでなく、「金利が変わっても無理なく返済していけるか」という視点が欠かせません。
そのためには、将来の収入や支出を見通すライフプラン(キャッシュフロー表)を作り、金利が上昇した場合にも家計が持ちこたえられるかを確認することが有効です。
8. まとめ 金利の一時的な動きに振り回されない
2026年11月は、一部の大手銀行で固定金利の引き下げが見られた一方、東海地方の地銀・信金では引き上げが目立つなど、金融機関によって対応が分かれました。しかし、長期金利が直近で低下したからといって、固定金利が今後も下がり続けるとは限りません。また、日銀の「物価2%」という判断も、利下げへの転換を意味するものではなく、今後も物価の安定に向けて金利を調整していく可能性を示しています。
住宅ローンに万人共通の正解はありません。金利の先行きを予測して一番有利な商品を選ぶことも必要ですが、どのような金利環境になっても家計が大きく崩れない資金計画を立てることの方が重要です。金利のニュースを追いかけることも大切ですが、それ以上に、自分たちの家計の将来を見据えて判断していきましょう。
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